国政報告
参議院予算委員会

平成25年5月14日(火)

安倍内閣の政治姿勢に関する集中審議

    

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○石井一予算委員長 最後に、舛添要一君の質疑を行います。舛添君。

○舛添要一 今日は、安倍総理がどういう社会をつくりたいかと、そういうことについて総理の政治哲学、特に税と社会保障の一体改革などに関連して御質問いたしたいと思います。
 安倍総理、ここのところ、私、この予算委員会で問題にしているのは、アベノミクス、どんどん頑張ってやっていただきたいんですけれども、こういう点、もっと補強した方がいいんじゃないかということで御提案申し上げました。先般は会社法の改正ということで御提案いたしましたし、そういう観点から見て、今日は是非総理に、格差、格差社会と言われているものに対して切り込んでくださいということを御提案申し上げたいと思っております。
 今、だんだん経済良くなっていく。これ、国民みんなが豊かにならないと駄目だと思います。富める人がどんどん富んで貧しい人がもっと貧しくなるようでは、私はこの日本社会というのはやっていけないというふうに思いますので、その経済成長の果実が国民にどう均てんさせるのかということが、これからの、長期的に見たときに安倍総理のかじ取りに懸かっていると思います。
 しかし、この前、私も自民党でしたけれども、お二方の内閣総理大臣の下で大臣を務めさせていただきました。しかし、政権交代で民主党に政権は移りました。そのときの一つの大きな理由は、やっぱり格差ということだったんだろうというふうに思っております。男女間の格差もあれば、世代間の格差もある。それから、先ほど同僚議員が質問をいたしたように、非正規労働者、派遣労働なんというのは、大変私、労働大臣として苦労をいたしました。
 そういう格差をどうするのかというときに、根本的な政治哲学の問題に入りますけれども、要するに自由か平等かと。自由に自由競争をやってどんどん効率を高めれば必ず格差は生まれます。しかし、片一方で、公平ということで平等政策を税金使ってやれば必ずモラルハザードが起こってくる。ですから、恐らく、国の最高指導者としてはそこのところのバランスをどう取るのか。
 そして、諸外国を見ると、どっちかというと自由の方に力点を置く政党、アメリカでいうと共和党、イギリスだと保守党、どっちかというと平等、これはアメリカの民主党とかイギリスの労働党あるんですけれども、日本の場合、余りそういう区分けしないで、大体真ん中のところに収まるような感じがしますけれども、今のその自由か平等かということについて、一言、総理のお考えをお述べいただきたいと思います。まず、抽象的なところから。

○安倍晋三内閣総理大臣 そこはまさにさじ加減なんだろうと、このように思うわけでありまして、日本はまさにその中庸を行っているわけでありまして、単に市場主義だけを追求するのではなくて、先ほど申し上げたんですが、言わば市場の原理としての効率性を求めていく、あるいは、基本的には頑張った人が報われていくという競争の原理を活用していくことは、とても、活力を得るためには、活力を維持し続けるためにも必要であります。
 しかし、同時に格差の問題がありましたが、格差とは何かといえば、やっぱりこれは耐え得ない格差というものがあるわけでありまして、同時に格差が固定することはあってはならない。そこで、さじ加減という話をしたわけでございますが、例えば税制とかあるいは政策的なことによって、それを調整していくことが求められていくんだろうと。つまり、日本的な市場主義、自由と平等という話がございましたが、日本の古来からの文化と伝統に根付いた自由と平等の中の中庸を図っていくという知恵が私たちにはあるんではないかと、このように思っております。

○舛添要一 今総理もおっしゃいましたけど、私は、厚生労働大臣をやっているときに非常に心を痛めましたのは、いわゆる貧困の連鎖と、子供の要するに貧困ということが大変な問題になりました。要するに、どの親の子供に生まれるかというのは子供の責任じゃないんで、そのことによって教育の機会を失われたりするということはずっとこの貧困の連鎖が続いていく。
 これは、社会として、ソーシャルモビリティーというか、社会的な流動性が非常に低下した社会になる。だから、山小屋から大統領府に、ホワイトハウスまで行けるという、これがある意味でアメリカの自由な理想なわけで、私は是非、そちらの方の社会的流動性を増すということを是非政策としてやっていただきたい。つまり、格差が世代間で継承されないということの方が私はいいと思いますが、その点はどうでしょう。

○安倍晋三内閣総理大臣 特に教育においてはそうですが、貧困の再生産があってはならないと、このように思いますし、まさに、この流動性をしっかりと確保していく、頑張れば頑張った人が報われていく社会がこれは重要であろうと、このように思います。

○舛添要一 ただ、頑張りようがない、つまり機会の平等が、結果の平等は私は求めません、だけど、機会の平等が保障されていない部分が多々あると思います。それは労働の分野でも教育の分野でもそうなんで、そういうところをどうするのかということが非常に大きな問題です。
 先般、総理と、ファビウス外務大臣来られて、フランスの件もちょっとお話ししましたけれども、ヨーロッパでは社会主義とか社会民主主義と冠する政党は結構政権に就く。今のフランスのオランド政権は、発足一年たって、めちゃくちゃ人気が悪いんですけれども、しかし、ああいうふうに政権取るのは、実を言うと、医療と教育について、要するに世代間で格差が継承されちゃいけないという、それがマルクス主義ではなくてフランスの社会主義の基本なんですね。ですから、少なくとも医療とか教育へのアクセスが阻害されるようなことは全力を挙げて阻止するという政治姿勢が国民に支持される。
 だから、私は、是非総理にも、今教育と医療、できれば労働の分野でも、アクセス阻害されないために自分はしっかりやるんだと、実はそれがないと経済良くなっても活力ある日本の社会は生まれないと思います。だから、アベノミクスの三本の矢だけじゃなくて、この前、会社法も言いました、いろんなことを申し上げているけど、矢をもう少し増やしていただきたい中に今言った問題があると思いますが、いかがでしょうか。

○安倍晋三内閣総理大臣 今委員の御指摘になった医療においては、皆保険制度があることによって誰でもどこでも一定水準以上のしっかりとした医療のサービスを受けることができますし、また教育においても、義務教育プラス様々な奨学金制度等について支援ができるということも大切でしょうし、また労働においても常にアクセスできると、これは例えば十八歳や二十二歳で決まらないということも大切なんだろうと思います。途中の段階においても学び直しもできますし、あるいはまた、同時に会社を、仕事を移っていくこともできると、そういう流動性が確保された社会になって初めて、今委員がおっしゃったような固定化が阻止されていくんだろうと。固定化ではなくて、言わば頑張った人が報われるし、様々な分野でそれぞれチャンスを得ることができると、このように思います。

○舛添要一 そこで、税制というのは私は非常に重要になると思います。所得、資産、消費、その三つの分野で税制を分けますと、例えば一番分かりやすいのは、所得税制について累進税率をどれぐらいにするのかなと。それから資産課税、これは捕捉できるかどうかは別として、資産課税についてどう考えるかと。それから、消費税についても逆累進性というような考え方があります。
 だから、一番分かりやすいのは、例えば累進税率を変えるというようなことでその政権のある意味で経済政策、財政政策が分かるわけですが、これは、麻生財務大臣でも構いませんが、安倍政権として税制について、今言った社会的な流動性を保っていく、格差を固定化させない、そういう観点から見てどういうお考えか、どちらでも構いませんのでよろしくお願いします。

○麻生太郎財務大臣 累進税率につきましては、もう舛添先生御存じのように、これは昭和六十年代以降、これ大幅に累進税率は緩和をされて、昔九〇%近くあったものが四〇%ぐらいまでに、所得分配機能というのはずっと低下させてきたんだと思います。逆に言えば、働くインセンティブというものがそっちにうまく働いたということになるんだと思いますが、いずれにしても、働くインセンティブを損なわないということと所得の再分配を図ることというのをどれくらいバランスさせるかというのは、これは永遠の課題みたいな話で、ちょっと私みたいな頭じゃとてもできませんので、これはみんなで考えていただくしかないんですが。
 安倍政権の中において、少なくとも最高税率につきましては、これは課税所得四千万円超につきましては、従来四〇%、民主党のときに四〇%だったものを四五%に累進課税を引き上げておるということで、一つの方向と言われればそういう方向であろうと思っております。
 ちょっと時間がなさそうだけど、今大体それで、あとの、ほかの所得税はよろしゅうございましょう。

○舛添要一 自民党が野党だったときに政権党にある民主党政権の政策を批判する、これは当たり前なんです。だけど、私は、自民党が野に下ったときにいろいろ批判された中で、民主党が批判した面で正しい面もあると思います。民主党は政権交代でまた野党になっちゃった。だけど、だから全て悪いんじゃなくて、やはり格差是正のような点について、いい政策は継承する、そのゆとりと幅というか、が必要だというふうに思っております。
 それで、先ほどの子供の教育についてなんですが、ちらっと先ほど総理もおっしゃいましたけれども、例えば、私は、奨学金制度を含めて就学支援というのを前の民主党政権以上に一生懸命やるということが、これはアベノミクスが成功する長期的な道だと思っておりますが、具体的にどういうような格差是正政策をやるか、今の奨学金を含めての就学支援、一つの例なんですけど、ありましたらおっしゃってください。

○安倍晋三内閣総理大臣 格差については、これはまさに固定化しないことや、同時に、誰もが何度でもチャンスがあるという社会をつくっていくことが大変重要であると考えております。先ほど申し上げました医療や教育、あるいはまた雇用のチャンスをしっかりと守っていく。
 教育については、引き続き奨学金や授業料免除を通じて家庭の教育費負担の軽減に努めていくとともに、教育再生実行会議の提言も踏まえて、世界トップレベルの学力と規範意識を身に付ける機会を保障する教育体制を構築をして質の高い公教育を確立をしていきたいと、こう考えております。やはり、質の高い公教育というのは、私立であればどうしても授業料は高いわけでありますが、公教育であれば誰もがアクセスできるということでございまして、この公教育の質を高めていきたいと。
 医療については、日本の国民皆保険制度は保険証一枚で誰でもどこでもしっかりとした水準の医療サービスを受けることができる世界に冠たる制度でありまして、引き続き社会保障のセーフティーネットを維持をしていきたいと考えております。
 同時に、お互いに良い意味で競争して、頑張った人が報われる社会を構築していくことによって継続的に富を生み出していくことも重要であろうと、このように思っております。

○舛添要一 安倍政権、どうしても自由とか経済効率性ということのイメージが非常に強うございます。だけれども、私は、やっぱり平等とか公平性をしっかり保つんだということを総理自らが国民に対して、政策を立案するときに、実行するときにしっかりおっしゃるということは、これが広く国民の支持を得る道だということを申し上げて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

○石井一予算委員長 以上で舛添要一君の質疑は終了いたしました。(拍手)
 これにて安倍内閣の政治姿勢に関する集中審議は終了いたしました。

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