国政報告
参議院予算委員会

平成25年5月8日(水)

外交防衛・経済連携等に関する集中審議

    

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○石井一予算委員長 それでは次に、舛添要一君の質疑を行います。舛添君。

○舛添要一 今日は安倍総理と安倍政権の防衛構想について議論をしたいと思いますが、その前に、本日の極めて異常なこの国会の状況、大変残念であります。この点について私の見解を述べさせていただきたいと思います。
 我々はみんな原点に戻る必要があると思っています。この国会を一日開けると国民の税金二億円使っているんですね。それだけの重みをみんな感じて国民の代表として仕事しているのかどうなのか。
 それから、私は、民主主義というのはルールだ。独裁に民主主義は負けない、民主主義が独裁者に座を譲らないためにルールを守るということが基本にあるわけです。ですから、その重みをもう少し考えていただきたいというふうに思います。
 そして、国益のために我々はみんな働いています。しかし、自らが日にちを設定した川口委員長が、その日に海外にいて委員会を開かないということを超えるだけの国益にかなうことを中国でおやりになったのなら、それは御本人が国民の前に説明する責任があると思います。私は少なくともその説明は受けておりません。そして、伝えられている報道によっても私は納得をいたしておりません。
 そこで、外務大臣、先ほどお答えが二転三転しておりました。最初、川口さんの訪中について知らないとおっしゃった。それから先ほど秘書官が来て、事務連絡は受けていると言った。
 そこで、たまたま私は、一月前に私も議員外交で中国に行ってきた。その内容は、野党でありますけれども国益にかかわりますから官房長官のところにお伝えをした、そしてこの予算委員会でも総理に質問する形できちんと皆さんとともに共有したのは同僚の皆さん覚えていらっしゃると思います。
 そして、外交の現場を多少でも知った者は分かりますけれども、私が幾つか質問します。事前通告がありませんから、その答えを理事会に外務省の方から出していただくようにお願いいたしますので、後ほど取扱いを委員長にお願いいたしますが。
 まず、川口環境委員長から外務省に対して、今回の訪中について便宜供与依頼があったのかなかったのか、これが第一点です。第二点、要するに、私は野党の一議員ですけれども、一月前に北京に行って中国の要人と会談しました。公表していいのは、唐家センさんと一時間半にわたって会談しました。当然、中国側も通訳を付けノートテーカーも付けますけれども、日本側の通訳、日本側のノートテーカーがいないと外交交渉になりませんから、相手にこう言ったじゃないかと言われたら終わりですから、だから基本的には、元外務大臣ぐらいの重い方が行かれるときには在北京の中国大使館が通訳なりノートテーカーを付けるはずです。付けたならば、その内容は公電として大使から外務大臣に行っているはずです。それは先ほど事務連絡と言ったけれども、何月何日北京発で外務省に着いたかどうか、それがマル秘公電でなければその中身はどうであったか。
 こういうことは私が質問しなくても、これだけ大事な、例えば、楊潔チ元外務大臣と言ったけれども、国務大臣です。戴秉国さんの後の国務大臣で、副首相クラスなんです。この方と会って重要な話をしたならば、それは総理にお伝えするなり、こういう予算委員会、外交防衛委員会で議論をするだけの価値があればそれはいいですよ。だけど、今言ったようなことについて、きちんと説明を外務省にしていただきたい。それは川口環境委員長本人がなさればいいんですけれども。今じゃなくていいです。ちゃんと聞いていてください。秘書官出てこないで。外務大臣に話しているんだから。
 ですから、そういうことについて、後ほどでいいですからきちんとやって、それで本当に、先ほど言った一日に二億円の税金を使って開いている国会の、国権の最高機関の国会、委員会制ですから、委員長の重みがいかに重いかというのは、私も外交防衛委員長をやりましたからよく分かっておりますよ。ですから、そういうことをきちんと説明できないならば、これは国益のためにやったということは、国民や我々同僚国会議員に対して説得的ではないと思いますので、その説明を是非やっていただきたいというふうに思います。そうじゃなければ、国会がいかに重いかということなんで、私は、川口委員長の責任もあれば、そして、これ議運で決めてきちんとしたルールを守ろうと言ったことを、ルール違反がいいですよということを決めた参議院の自民党の執行部にも問題があると思います。是非、総理、副総理、政権党としての矜持というのがあるはずなんです。
 そして、あしたの十時に参議院の本会議が既に設定されております。ですから、これはもう単純な数の計算ですから、結果がどうなるかはお分かりになると思いますから、私は、せっかく経済政策含めていい政策をやり、私は野党ですけれども、安倍政権がいい政策出せばそれは賛成する、予算案でもいいのがあれば賛成する。しかし、今回は、良識の府の参議院でこういうことをやっちゃいけないんです。ですから、何としてでも民主主義というものを守るために、こういう基本をしっかりするということをやらないと、せっかく安倍総理がいい政策をなさっても、こういうことから国会運営が行き詰まってくるというようなことになれば、私は大変な問題になると思いますから、安倍政権のためにも、是非、自民党の良識のある方々の御決断を願いたいというふうに思います。回答は要りません。私の今所見を述べさせていただきました。
 さあ、そこで、防衛構想について本来の質問に入りたいと思います。
 私は、昨年、一年前に当時の野田民主党政権に、首相に対しまして、平成二十二年の防衛計画大綱に定める動的防衛力というのは何なんだという質問をしました。防衛力に静的も動的もないはずなんで、その前は基盤的防衛力ということで、基盤的というのはもう基本的なことをしっかりやろうというので、これは意味があった。時代が変わりました、だから動的になりましたということなんですけれども、せっかく政権交代をして安倍総理になったわけですから、じゃ安倍政権はどういう防衛構想でやるのか。
 これは自民党の国防部会でいろいろ議論なさっていると思いますけど、伝え聞くところによりますと、動的に機動を加えて動的機動防衛力とか、それから強靱な防衛力というような言い方をしようということなんですが、これは総理でも防衛大臣でも構いません、どういう方向でやっているのかということをまず御説明いただいて、それから総理の見解も伺いますけど、その前に、委員長、私が先ほど申し上げた、外務省に対して公電云々についてきちんと回答してくれということを理事会で取り扱われるように、まずよろしくお願いします。

○石井一予算委員長 一言申し上げます。
 非常に正当な御主張のようにうかがえますので、外務大臣におかれましては、舛添委員の要請にこたえて、それなりのアクションを取っていただきたいと御要請しておきたいと思います。

○小野寺五典防衛大臣 今御指摘ありました、与党内におきまして動的機動防衛力や強靱な防衛力という議論が出ていることは承知をしておりますが、私ども防衛省といたしましては、現下の状況、大変、安全保障環境変化をしておりますので、平成二十二年の防衛大綱における考え方をどのように検討するかということで、現在、防衛省内におきまして、防衛副大臣を委員長としまして防衛力の在り方検討会を現在まで十三回開催しております。これは、内外情勢、あるいは今自衛隊が求められる機能、あるいは情報、サイバー、宇宙、あるいはBMD対応、インテリジェンス、様々なことの分野において今検討している最中でございます。 ○舛添要一君 安倍総理、私はむしろ、この基盤的防衛力というときの意味はよく分かるんですよ。だけど、これだけ大きな国になって、周辺で、北朝鮮は核ミサイルを放とうとしている、それから中国は特に海軍の軍拡をやっている、そういうときに余り形容詞を付けて何々的防衛力とかいうよりも、本当に普通の国の持つべき防衛力はこうだということをやった方がいいと思うんですが。
 ちょっと、民主党政権のときも自民党と違うところを見せようと思って動的ってやった。だけど、もうそういう言葉の遊びって言ったら失礼なんですけど、今御説明、防衛大臣、きちんと説明していただいてありがとうございました。是非、内容についてむしろきちんとやっていただきたいと思いますが、総理の御見解はいかがでしょうか。

○安倍晋三内閣総理大臣 基本的には防衛大臣から答弁したとおりでございますが、まさに舛添委員の御指摘のように、かつては冷戦構造の中において我が国の担うべき役割というのはある意味限られていたわけでございますが、今この安全保障環境が大きく変わりまして、むしろ大変厳しく変わっている中において、これはかつての基盤的防衛力構想的な、これは確かに形容詞の問題ではないですが、外的状況がどう変動しようとも最低限こうですねということではなくて、やはりある程度この変化に対応するものでなければならないと、こう思っております。
 中国も、二十三年間で三十倍に防衛費を増やしている、特に海洋戦力を増やしているところに着目をしなければならないわけでありまして、この中において、国民の生命、財産、そして領土、領海をしっかりと守るべく強化をしていく。そのための具体的な内容については今与党で議論をしているところでございますが、本年中にしっかりと結論を出すべく検討を進めていきたい。その際、今、舛添委員がおっしゃったような観点からもしっかりと議論をしていくことが必要であろうと、このように思っております。

○舛添要一 かつて、例えばF15のような戦闘機を持つときでも、専守防衛だということで足の短いのしかわざとに持たせなかった。それから空中給油機を入れるような形で少しずつなってきたんですが、しかし、一つ問題にしたいのは敵の基地の攻撃能力を持つのか持たないのかということでありまして、今インテリジェンスの機能は極めて優れています。我々も衛星を上げました。アメリカも持っています。それで、明確に日本を標的にして攻撃能力のある兵器、ミサイルのようなものが設定された。さあ、そこまで分かっていて、よく言うように、座して死を待つことはいたさないというのが政府の見解だと思いますけれども、そこまで分かったときにどうするのかと。
 私は、この基地攻撃能力の保有ということについてもそろそろ議論すべき時期に来ているんではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○小野寺五典防衛大臣 今、先生よく御存じだと思いますが、いわゆる敵基地の攻撃能力というのは、憲法との関係において、政府は従来から、法理上の問題としては、他に手段がないと認められるものに限り、敵の誘導弾等の基地をたたくことは憲法が認める自衛の範囲に含まれるというような解釈を取らせていただいております。
 現在、このような役割については日米同盟の下に米国に担っていただいておりますが、今後、様々な国際情勢の変化を踏まえ、国民の生命、財産を守る上で、私どもとして様々な検討をしていくことが必要だと防衛省としては考えております。

○安倍晋三内閣総理大臣 つまり、今、小野寺大臣が答弁したように、盾は自衛隊が担い、そして矛は米軍と、そしてこれを両方合わせて抑止力としているところでございますが、それが果たして抑止力として十分なのかということでございます。
 抑止力とは、つまり攻撃をしたら痛い目に遭うよ、そもそも攻撃することは考えない方がいいという状況をつくっていくことでございますが、彼らが、もしこの矛を米軍がこういうケースでは使わないんではないかという間違った印象を与えることはあってはならないわけでございまして、そこで、今まさに日本を攻撃しようとしているミサイルに対して、米軍がこれは攻撃してくださいよと、米軍の例えばF16が飛んでいって攻撃してくださいよと日本が頼むという状況でずっといいのかどうかという問題点、課題はずっと自民党においても議論をしてきたところでございます。
 しかし、これは国際的な影響力もございますので慎重に議論をしなければならないわけでございますが、言わばこの抑止力をしっかりと維持をしていく上において、相手に、これはやはり日本に対してそういう攻撃をすることは自分たちの国益あるいは自分たちの国民の命にも大きな影響力があると思って思いとどまらせるようにするという、抑止力を効かせる上においてどうすべきかという議論はしっかりとしていく必要があるんだろうと、このように思っております。

○舛添要一 次に、南西諸島や尖閣の問題含めて、島、島嶼の防衛能力を強化すべきだというふうに思います。中国は、A2AD、アンタイアクセス、それからエリア・ディナイアルということで、とにかく自分たちの領域と決めたものを守っていくという形で、それこそ、横須賀の基地だってこれはアンタイ、ディナイアルのカバーする範囲に入っているわけですから。
 そこで、民主党政権の下でも防衛省が大変努力して情報収集能力その他の能力を上げてきたことは大変結構だと思いますけど、さらに、それに加えて、まさにだから機動力というのを入れたんでしょうけれども、陸上兵力を輸送して例えば尖閣を守るというような事態が来ないことを期待しますけど、来た場合に、そういう輸送能力を含めて十分準備をしておかなければ、これは我が国固有の領土、領空を守れないと思いますが、その点はどういうふうに防衛省として対応なさっているのか、簡潔にお答えください。

○小野寺五典防衛大臣 一般論として、島嶼防衛ということになると思いますが、これは、迅速かつ機動的に初動態勢を行う部隊としまして西方普通科連隊というのを新しく再編をいたしまして、現在、米国海兵隊との共同訓練、これを行って、ボートからの上陸等の高い機動能力を持つ、そのような準備をしておりますし、また、装備にしましても、例えば海自の輸送艦に搭載することができるという形としてLCAC、あるいは今回の予算の中で今御審議いただいておりますが、水陸両用車の参考品、これ等を購入するための経費を計上させていただいております。

○舛添要一 私はアメリカで実際に軍の演習を何度か見させていただきましたけれども、海兵隊の機能というのはやっぱり非常に優れたものがあって、陸海空の機能を全部持っている。ここにまさに機動性があるので、海兵隊を日本が持つかどうかというのは別問題としても、少なくとも海兵隊的な機能を今からの日本の自衛隊が持たないと十分に我が国の領土を守れないと思いますけれども、そういう認識については総理はいかがお考えでしょうか。

○安倍晋三内閣総理大臣 いわゆる島嶼防衛について言えば、海兵隊的な機能を我が国が備えていく必要性についてやはり議論していかなければならないと、このように思います。

○舛添要一 先ほど水戸議員の質問にもありましたけれども、最後の質問なんですけれども、日米安保体制の強化ということを考えれば、やっぱり集団的自衛権というのは、持っているけれども行使できないんではなくて、やはり行使するという形で政府の解釈を変えるということが一つの解決法だと思います。すぐには憲法改正というわけにはいかないでしょうから。
 ですから、是非、同盟国として相互に協力し合うという観点から、この集団的自衛権の行使についてもしっかりと安倍内閣の下で検討して、早急に政府解釈を変えるなり、いずれは憲法改正ということになると思いますけれども、そういう方向で御努力なさるのかどうなのか、御答弁願いたいと思います。

○安倍晋三内閣総理大臣 政府としては、国民の生命、財産、領土、領海を守っていくという義務があるわけでございまして、その中において、今までの解釈でいいのかどうか。守るためには、日本一国では守れないわけでございまして、アメリカの同盟関係において、先ほど盾と矛というお話もさせていただきましたが、その中で、守っていく上において今の解釈でいいかどうかということを今御議論をいただいているわけでございますが、この議論をしている以上、検討していただいた上において結論を得て、その上において対応を考えていかなければならないと、このように思っております。

○舛添要一 行政権を我々国会がきちんとチェックしていくのは、この国会審議を通じてであります。私たちは言葉を通じて政治をやっていく、それが国会議員の仕事だというふうに思っております。そして、先輩たちが営々と築いてきたルールというものをしっかり守った上で、正しい国会、とりわけ参議院の姿を取り戻したいということを申し上げまして、終わります。
 ありがとうございました。

○石井一予算委員長 以上で舛添要一君の質疑は終了いたしました。(拍手)
 これにて外交防衛・経済連携等に関する集中審議は終了いたしました。

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