国政報告
参議院予算委員会

平成25年4月23日

    

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○石井一予算委員長 それでは次に、舛添要一君の質疑を行います。舛添要一君。

○舛添要一 いつものようにしんがりを務めさせていただきます。
 総理、今日は、日中関係と新型インフルエンザ対策についてお伺いしたいと思います。
 非常に私は今の日中関係を危惧しておりまして、本当に冷え切ってしまったなという思いがあります。何とかこれを解きほぐすのは、政府のみならず我々国会議員としての役割でもあると思っておりましたので、四月の初めに中国に行ってまいりました。元の外務大臣の唐家センさん始め要人と、政府の方々とお話をしたり、北京の清華大学で講演したりというようなことで対話を重ねてきましたけれども、大変厳しいなと。これは、じゃ、どうやったら君は解決するんだねともし総理に問われれば、私もすぐには答えがないような感じがいたしますけれども、まずこの非常に厳しい状況だという認識を総理が共有していただけるかどうかということと、それとやっぱり基本は私は対話、話合いで解決すべきだという点だと思っています。これは先方もそういう考えだと思います。
 ただ、もう一つ、今朝、領海侵犯がありました。外務次官が駐日大使を呼んで厳しく抗議をしましたけれども、こういう挑発に対しては必ず厳しい抗議をやっていく、現場では海上保安庁もしっかりやってくれていると思いますが、これ一回でも抗議を怠ると、既成事実を積み重ねていって、結局はこれは自分のものだということになる。それは、ベトナムとかフィリピン、南沙諸島を見れば分かると思います。
 そういう認識を持っておりますので、取りあえず今の日中関係に対する総理の御認識をお伺いしたいと思います。

○安倍晋三内閣総理大臣 本日、我が国の固有の領土である、これは歴史的にも国際法的にも我が国の固有の領土であることは間違いないわけでございますが、そこに中国の公船が領海を侵犯をしたということは遺憾であります。我が方としてはきっちりと対処しておりますが、しかし一方、日中関係というのは最も重要な二国間関係の一つでございますし、経済においては切っても切れない関係があるわけでございます。
 ですから、この尖閣に言わば中国が挑発的な行動を取って問題があるからといって全ての関係を閉じてしまうのは間違いであります。つまり、そういう中において、舛添委員が行かれて唐家センさんが会うと、こうした対話が行われるべきであろうと、このように思っておりますし、安倍政権においても対話のドアは常にオープンにしているということは申し上げておきたいと思います。

○舛添要一 私も中国に参りまして、先般の国会における総理と私の質疑を御紹介いたしまして、今総理がおっしゃった、対話のドアは常にオープンだということも申し上げました。先方も、自分たちも対話のドアはオープンだと。さあそこで、そこから先どうするかということが非常に大切なので、私は、今の段階で焦って拙速主義で、直ちに日中首脳会談をやるとか日中外相会談をやるとかいうことは急ぐ必要はないと思っています。
 私が向こうの大学で記念講演をやったのは、若い人たちと対話をしてみようということであるので、文化でも芸術でも何でもいいと思いますから、できるところから積み上げていくということが必要だと思いますので、この政治的、最終的には中国共産党、政治が判断するんですけれども、私はそこを、関係改善を焦る余り日本政府がちょっと拙速主義に陥ることをむしろ危惧していますが、そこは総理はいかがですか。

○安倍晋三内閣総理大臣 日中関係は、先ほど申し上げましたように、隣国であり最も重要な二国間関係の一つであります。他方、尖閣については、これはまさに我が国の固有の領土であって、領土問題は存在しないわけでございますし、交渉の余地はないことははっきりしているわけでございます。
 そこで、日本としては基本的に対話ということについてはいつでもやる用意はございます。ただ、それを、言わば会うか会わないかということを、これを外交交渉のツールとして使うべきではないし、使われてはならないというのは当然のことであろうと、このように思うわけでございまして、我々は決して焦っているわけではございませんし、いずれにせよ、私たちは常に対話のドアは開けているということでございます。

○舛添要一 それで、実は四川のまた震災が起こりました。我々としても、これはもう本当に、前回の四川のときにも支援いたしましたし、我々の大震災、三月十一日の、二年前のときにも大変な支援いただいているので、本当は支援したいんですけど、先方が御辞退なさった。だから、こういうことをできれば支援したいなというのが一つあります。
 それから、私がもう北京に行って驚いたのはPM二・五のすごさで、三百という数字の中で、前が見えないような真っ白な中におりましたけれども、これはやっぱり、ちょっとおせっかいかもしれないけれども、相当日本が環境支援をやることが必要じゃないかなというふうに思っております。いかがでしょうか。

○安倍晋三内閣総理大臣 PM二・五の問題は、これは中国だけの問題ではなくて、これはずっと日本にも押し寄せてくるわけでございますし、例えば九州、下関、下関は私の地元でございますが、この辺にもこの被害は及んでくるわけでございまして、日本全体にもこれは及ぶかもしれないという中において、こういう環境問題については国際社会で協力し合うということが極めて重要であります。我が国には技術、知見がございますから、そうしたものを生かして協力をしていきたいと、こう考えております。

○舛添要一 それとまた、たまたま私がいるときに鳥インフルエンザが中国で発生し始めて、私自身がビールスを持って日本に帰ってきていないことを祈りますけれども、物すごい数の行き来があります。私も福岡ですから、もう、麻生副総理もそうですけれども、とにかく二時間、三時間で上海と行き来できるところですから。
 今非常に心配していますのは、総理、今は、昨日のWHOの発表でも、まだ人、人への感染、人から人への感染が確認されていないんですけれども、人から人への感染が確認されて、爆発的に感染すればパンデミックになる可能性がある。私は、今、日本政府としてはそのことを前提に置いて危機管理体制を構築しておくべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

○安倍晋三内閣総理大臣 今般の鳥インフルエンザ、H7N9に関して、国立感染症研究所のインフルエンザウイルス研究センターがウイルスの解析を迅速に行って、中国との情報交換を行っているところでございます。今般の中国において人での発症が確認されたこのH7N9に関する対策について、現在、徹底した情報収集と国民への情報提供に努めているところでございます。今後、どのような経緯をたどるか注視をしながら、前回の経験も踏まえ、これは大変舛添大臣が御苦労されたことでございますが、危機管理の観点からの対応に努めていく所存でございます。
 万一の事態が起きた場合には、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて、政府一体となって速やかに必要な対策を取り、今後も対応に万全を期していきたいと思います。

○舛添要一 田村厚生労働大臣、今回、今総理がおっしゃった特措法、それから行動計画案が策定されましたけれども、麻生内閣時代に麻生総理が本部長、私が副本部長で本当に全力を挙げて対応いたしました。今回の特措法はその麻生内閣時代の経験が相当生かされていると思いますけれども、国民の皆さんのために、特措法及び行動計画の基本的な概要、こういうところだというのがもし御説明できれば。
 官房長官、御到着なさったばかりですが、よろしゅうございますか。そうじゃなきゃ、私が申し上げてもいいですが。

○菅義偉官房長官 済みません、話の意味は余り通じていなかったかもしれませんけれども。
 今、総理から答弁がありましたけれども、まさにこの感染症対策として、医療現場、国民一人一人、正しい情報が適時適切に提供されることが効果的対策に不可欠である。そういう中で、政府の行動計画について、発生状況、対策の実施状況を速やかに情報提供することを規定しており、政府として情報提供に万全な対策を取っていきたいというふうに考えております。
 いずれにしろ、舛添委員がかつて厚労大臣のとき、横浜市であのようなことがありました。やはり政府内で全体として速やかに意思疎通というものを図って、その上に都道府県を通じてその考え方を伝達していく、このことが一番大事なことだと思っています。

○舛添要一 今、横浜の例が出ましたが、実は四月五日の衆議院の予算委員会で、当時の横浜市長だった中田議員が私どもの対応を批判しておりました。初めてのケースですから相当苦労しましたけれども、あのとき御本人が言っていたのは、電話回線がパンクして国と連絡取れなくなったと。私どもは、横浜市が感染者かどうか検査すると言うから検査結果を待っていたんです。深夜になったら電話通じないんですよ。回線がパンクするようなことで危機管理体制ができますかということを私は申し上げたいんです。
 したがって、今回は、私は、現場第一主義、現場が大事だと、それから情報は絶対公開しろ、この二つを申し上げたいんです。
 現場第一主義について言うと、今回、都道府県知事の権限を強化したんです。それは、厚労大臣がいたって分からないです、神戸で何が起こっているか。だから、現場しっかりやりなさいと。そうすると、都道府県知事がやらないと、あのときは、大阪府は学級閉鎖やったのに政令指定都市の堺と大阪市がやらないで、話にならなかったんです。だから、こういう結果を入れたんですが。
 さあ、そこで問題。首長さん、知事さん、市長さんでもいいです、その方が危機管理能力を欠いていたり、その町が電話回線パンクするような危機管理体制がしっかりしていなかったときに、任せられませんね。じゃ、どうするんですかということです。どうですか。

○田村憲久厚生労働大臣 法律の所管は官房長官ですけれども、実際問題、対応するのは厚生労働省ということになろうと思いますが、今回この特措法の中において、今委員おっしゃられましたとおり、知事に一定の権限ができたわけであります。
 そういう意味では、やはり現場、それぞれ知事がそれぞれの県の現状を見ていただきながら適切に対応いただくと。今言われたような一定の必要なインフラ等々は、社会的なインフラに関しましては、これは一定程度機能をしていただかなければ困るわけでありますし、食料等々に関しては、こういうものに対してはやはり生活する上の物資でありますから重要でございますので、そのまま機能するわけでありますが、必要不可欠のもの以外に関しては知事の方からいろいろと問題点等々に関して対応をしていただける、人の集まるようなところには人が集まらないような形での要請、こういうものをしていただけるようにしたわけでございます。
 県の知事がそういう危機管理の意識がなかったらどうするんだという話でありますが、そこは密接に都道府県と厚生労働省の方でいろいろと連絡を取らしていただきながら、これはどうしてもという場合、都道府県が対応しなければ、それはこちらからしっかりと要請をさせていただくということになろうと思います。

○舛添要一 横浜のケースは大変私も参考になりました。これはいかぬと思いましたから、翌日から重立った都道府県の首長さん、市長さんたちとホットライン全部結びました。したがって、大阪、神戸で起こったとき、真夜中でも何でも連絡できたので、是非、厚生労働大臣も官房長官もそうやっていただきたいと思いますし、中田さんが横浜市長をお辞めになった後、横浜市の危機管理体制がしっかりなっていることを祈りますけれども、官房長官、チェックしてみてください、お願いします。

○菅義偉官房長官 今厚労大臣が答弁されましたけれども、政府対策本部長は都道府県知事に対して総合調整と指示を行うことができることになったのが一番大きいというふうに思います。そこは政令指定都市であろうがほかの市町村であろうが、県の知事に対して調整できるわけでありますから、そこはしっかりと対応できるようにしていきたいと思います。

○舛添要一 それからもう一つは、情報を公開すると。中国では百人以上が感染して二十一人亡くなったというデータ出ていますけれども、どうしても私たちはもっといるんじゃないかと思うのは、あの国が情報公開することをちゃんとやっていないから疑っちゃうんです。
 だから、日本政府は、是非それをやっていただきたいのは、麻生総理、あのときよく覚えていらっしゃると思いますけれども、横浜のケースは、横浜自身が疑いがあるといって検査していたんです。我々も、厚生労働省も能力はありますけど、待っていて、白か黒かなんだけど灰色だと言ってきて、それはどうするんだと言ったらぷつっと電話切れちゃうと、こういう状況だったんで、さあそこで、当時の麻生総理と私は、もうどうするかということで迷いまして、しかし、疑い例があってマスコミが動き始めているときに政府が知らないでは翌朝横浜は大パニックになる。したがって、私は、夜中の一時でしたけど、こういう疑いがあって今検査をしていますということをお知らせしたんです。
 これが悪いといって当時の横浜市長が批判しましたけれども、例えば、二〇〇九年五月二日の読売新聞が社説でわざわざこういうことを書いている。「情報提供では、未明に大臣が会見して「疑い」例を公表した。それだけ重大視したのだろう。迅速な事実公表は当然のことだ。」と。
 これは、ですから、当時の麻生総理と舛添厚生労働大臣の名誉のために申し上げますけど、私たちは本当に国民のために全力を挙げてした。その基本は情報公開なんです。だから、絶対にどんなことがあっても、疑い例でも情報公開をするということが政府に対する国民の信用を高めると思いますので、総理、いかがでしょうか。

○安倍晋三内閣総理大臣 パニックはなぜ起こるかといえば、基本的に、間違った情報が伝わる、あるいは政府が情報を出さないことによって、結果として疑いから逆に流言飛語が信じられてパニックに至るというケースが圧倒的に多いわけでありますから、しっかりと政府は情報公開をするとこの場でもはっきりと申し上げておきたいと思いますが、ですから、政府が出す情報を信じていただきたいと思いますし、もしそういう状況になった場合には、言わば当局の対応に従っていただきたいと、このように思う次第でございます。

○舛添要一 それから、厚生労働大臣、行動計画に非常に強制力を持たせる部分がありますね。これがいろいろ危惧されていますが、具体的に国や地方公共団体がどういうことができるかというのを説明してください、パンデミックのときに。

○田村憲久厚生労働大臣 一つは、先ほど申し上げました、都道府県が、パンデミック起こった場合に、それぞれ人が集まるところ、また集会等々に対して、企業もそうでありますけれども、そういうものに対して、人が集まるところに対して人が集まらないように、会社等々においては、会社等々に関して、指示といいますかお願いでありますけれども、集会等々も開いていただかない、こういうようなお願いをさせていただく。もしこれに対して拒否があった場合には名前を公表するというような形ができるというふうになっております。
 あと、今回の場合は、前回は停留という措置を講じました、今回この停留というものがそもそも有効かどうかということ、これはしっかりと検討をしなければならないと思っております。でありますから、停留に関しては、ちょっと今いろいろと検討をさせていただきながら考えておるというような状況であります。
 あと、基本的な部分で、前回もそうでございましたけれども、優先的に接種をされる方々、こういう方々に関して方向性をしっかりと決めた上で優先接種の方をさせていただくということにこれはなってこようと思います。
 るる基本的なインフラ等々に関しては、これはこちらの方から逆にインフラを止めてしまう、若しくは食料等々を売っているところ、販売等々を自粛されますとこれまた困るわけでありまして、場合によっては、売惜しみ等々がありますとこれは大変なことになりますので、こういうものは国が一定の権限を持ってこういうものに対して、これを集めて国の方でしっかりと対応するというようなことができるというふうになっております。

○舛添要一 問題は、それが意図された形で出ればいいんですけれども、例えば前回のときに、発熱外来をつくって、そこでしか診ちゃいかぬというのは前もって決めていたんです。ところが、結果的に、それつくる手間暇よりも自宅にじっといてタミフル飲んでもらったら治るという、こういう状況だったんで、やっぱり現場の医師の意見を一番聞くことが大事です。
 ちょうどそろそろ連休になりますけれども、先ほどの横浜の例で申し上げましたように、連休のころだったんですよ、あの二〇〇九年。それで、私は一切指示を、大臣として指示しませんでしたけど、もう主催者が自発的にイベント全部中止ないし延期です。だから、日本人は非常に賢明なので、映画館へ行くなと言わなくたって行きません。
 だから、非常に今度の特措法や行動計画について批判を受けているのは、人権を無視するんじゃないかと、人権が損なわれるんじゃないかということがあるので、私は、日本人の賢明さを信じて必要最低限の指示、いよいよ困ったら出ていく、そして現場は任せると、こういうことが必要だと思いますが、総理、いかがでしょうか、その点。

○安倍晋三内閣総理大臣 この新しいインフルエンザ特措法において、新型インフルエンザ等緊急事態宣言をすることによって本部長である私は大きな権限を得ることになりますし、各都道府県、自治体に対して調整権限を持つことになるわけでございますが、実際、国民の皆様の行動を制限することにもつながるわけでございますから、それは安全を確保する、国民の皆様の安全を確保するという観点と、やはり権力の行使でありますから、これを抑制的に考える、ある程度やはり現場において効率的に行動をされるということも頭に入れながら対応していきたいと、このように思います。

○舛添要一 冒頭申し上げましたけれども、私が大臣のときに、中国と韓国と日本の厚生労働大臣、北京で集まりまして事前にこのことの準備をしていたので、この三国は非常に被害が少なかったので、こういうことの協力も外務大臣を中心におやりいただければというふうに思っております。
 それから、いろんなマニュアルを作っていたんですけれども、当時の麻生総理も私も、大変マニュアルどおりにいかないで苦労したことを記憶しております。ですから、特措法、行動計画あっても、要は現場のリーダーシップ、特に厚生労働大臣、官房長官が副本部長で入り、それから総理が本部長ですから、そういうトップのリーダーシップが極めて大事なので、そういうことで是非国民の生命を守り抜くと、そういう決意で対処していただきたいと思います。
 最後に一言、御決意のほどを総理にお伺いして、質問を終わります。

○安倍晋三内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、まさに特措法において緊急事態宣言をして、私が本部長になる大変大きな責任を持つわけでございますから、しっかりと情報提供を行いながら、関係機関がそれぞれの役割を十分に果たす能力を備えていることがもちろん肝要でございますが、その上に立って、先ほど申し上げましたように、運用に当たっては基本的人権に配慮しながら、状況に応じて感染拡大防止等の対策を果断に実施するとともに、医療現場や国民に対し適時適切に情報提供がされるよう十分配慮をするなどして対応に万全を期していく考えでございます。

○舛添要一 終わります。ありがとうございました。

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