国政報告
参議院予算委員会

平成25年2月27日

    

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○石井一予算委員長 十分程度遅延いたしておりますが、中継は続くものと期待いたしております。
 十分以内に舛添要一君、よろしくお願いします。

○舛添要一 安倍総理、今日は、大変今悪化しています日本と中国との関係、これどうすれば立て直すことができるかと、このテーマに集中して御議論申し上げたいと思います。
 まさに安倍総理のときに、二〇〇六年十月、中国にお行きになって、そして戦略的互恵関係ということを定められて、その後、翌年、温家宝さんが来られる。大変、日中関係がいい方向に向かっていった。その後、ずっと悪化をしてきた。麻生副総理もそこおられますけれども、その後、福田総理、麻生総理の下でも日本と中国の間の戦略的互恵関係とずっと言い続けてきたんです。
 ところが、この言葉が呪文になってしまったということで、この呪文という言葉は私が使ったんではありません、野田総理です。昨年の一月三十一日のこの予算委員会で私が質問しましたら、こういうふうにおっしゃった。昨年暮れの日中首脳会談で戦略的互恵関係の話をしました、これを呪文のようにお互いに唱えながら。私が中国の要人と話しても、必ず戦略的互恵関係やりましょうと、そこで止まっちゃうんですね。これは、麻生副総理が韓国へ行かれて未来志向、私たちも常に韓国とは未来志向、その言葉で止まってしまう。
 ですから、安倍総理の大きな仕事は、二〇〇六年十月に打ち立てられた戦略的互恵関係というのが、時の総理が、しかも相手のカウンターパートがお互いに呪文のように唱えてそれで終わってしまう。そういう状況になっているということをどういうふうにお感じになっているか。
 そして、これは安倍総理、大きな責任がおありだと思いますので、この言葉で始めた日中関係がここまで悪くなった、是非これ立て直すために、一つは、もうこの言葉を使わない、ほかの言葉を新たに作るというのも一つなんですけど、しかし、これは悪い言葉ではないし、意味するところはいいことなので、後ほどまた御質問しますけれども、どうすればいいかということで、まずはこの立派な言葉が時の総理が呪文と言うまでおとしめられたことについての御感想をお伺いいたします。

○安倍晋三内閣総理大臣 野田総理が呪文というふうに言われたということを私は寡聞にして存じ上げなかったんですが、しかし、それが呪文であったとしても、それを唱えることによって、言わばそこでそれ以上悪化する歯止めになるのであれば、私はそれでいいと思うんですね。
 つまり、戦略的互恵関係とは何かといえば、今まで友好第一で来た関係、これは、やはり友好は本来手段であって目的ではない、目的は国益を守る、それは日本も中国も同じであります。日本も中国も外交上だけではなくて、特に経済上では切っても切れない関係にあるわけでありますから、この関係を維持していくことはお互いにとって国益だねということを理解し合っていく、これは相互の国益だ、そして、それはまさに戦略的な関係、それを認識することは戦略的な関係であろうと。
 つまり、国境を接していますから、いろいろなこれはぶつかり合いもありますし、認識の違いも生じるけれども、そういうことが起こったとしても、戦略的互恵関係というのは常にお互い全面的に関係を悪化させない、つまりお互いがそれを悪化させては困るであろう経済の関係においては影響させない、これこそが戦略的互恵関係なんだろうと思います。
 かつて中国国内において日系企業が襲われた、これはまさに戦略的互恵関係を損なうものでありますから、原点に立ち戻って、今こそ、こういう課題があるからこそ様々な言わばルートで対話をする、様々なクラスにおいて対話をし、そして高レベルの対話、政府間の対話も今こそするべきだろう。
 私はいつも申し上げているんですが、日本としては、日本政府としては、ドアは開いている、対話のドアは常に私の方の側では開いているということを申し上げているところであります。

○舛添要一 この三月の半ばには全人代が終わりまして、習近平体制が人事を含めて固まるので、是非その後に本格的なこの戦略的互恵関係の再構築をやる必要があると思っています。
 二つやっぱり注意する必要があって、まず第一に、具体的に何をするかということなんですけれども、二〇一〇年九月の中国の漁船のあの蛮行というか、こういうことから非常に東シナ海をめぐって悪くなりました。ただ、いろいろやれることがありまして、一つ具体的な提案といえば、今大気汚染が非常に中国大変になっています。麻生副総理や私の里の福岡県というのはまさにその影響も受けているわけですから、我々は大気汚染対策、環境、それから例えば原発事故に対する対策、こういうノウハウを持っているわけですから、是非、例えばこういう環境面での協力を進めることによって少し互恵関係を進めるのはいかがかと思いますが、この提案に対していかがでしょうか。

○安倍晋三内閣総理大臣 今、舛添委員が御指摘になった原発の安全性向上と、あるいはまたPM二・五の問題、これは日本にもやってきているということもありますし、そもそもこれは中国にとっては深刻な問題なんだろうと思います。日本にとっては、それを解決をしていく技術、ノウハウもありますから、是非そういうところから協力をしていく、今の御指摘はまさにそのとおりだろうと、このように思います。

○舛添要一 それからもう一つ、これは情報面での協力として、今北朝鮮が核実験を更にやる、またミサイルを飛ばすというようなことをやっておりますけれども、そういう軍事的な挑発に対して、中国はやっぱり北朝鮮の言わば後見役として非常に大きな影響力と情報を持っていますから、是非、そういう軍事的な面での戦略的対話を通じて北朝鮮が暴発しないように日中で協力すると、これは一つの大きなカードになり得ると思いますが、総理はいかがお考えでしょうか。

○安倍晋三内閣総理大臣 世界で北朝鮮に対して最も影響力のあるのは中国でありますし、また安保理の決議を行うためにも、拒否権のある常任理事国である中国は決定的な力を持っているわけでありまして、その意味においても、中国の協力を得ることができるように努力をしていかなければならないと思っております。

○舛添要一 我々は、日韓関係でも日中関係でも、もう二国間関係だけを考えて、例えば尖閣の問題、これはもう我が国益にとって大変ゆゆしい問題ですけど、そこに集中しちゃうと、この国際関係の中における二国間関係という視点がなくなってしまっちゃう危険性があるわけですけれども、中国は片一方で平和的発展と言いながら、片一方で核心的、コアですね、利益と言う。こういう矛盾をたくさん抱えている中で、やはり例えば総理が日中で首脳会談をおやりになるようなときには、東アジアの安定というのは、実は世界の経済にとっても世界の平和にとっても根本的に重要なことだということをしっかりと中国の指導者と議論して、そのことを確認し合うことが重要だと思いますが、その点はいかがお考えでしょうか。

○安倍晋三内閣総理大臣 今、舛添委員がおっしゃったことこそ私は戦略的互恵関係なんだろうと思います。
 朝鮮半島の平和と安定を守っていく、あるいは東アジアの平和を守るために日中が協力をすることによってお互いが国益を確保する、これを認識し合うということが戦略的互恵関係であって、両国が両国の関係を生かして戦略的に協力をしていくということこそ大切なことであり、それこそが戦略的互恵関係だろうと思います。

○舛添要一 最後に、世界経済にとりましても、やっぱり世界の成長センターはアジアであるわけで、日中間の経済的な関係の深さを考えると、それを犠牲にしてまで冒険的なことをやるべきではないというふうに思っておりますが、時間が限られていて、御答弁の時間短くて恐縮でございますが、時間内に、委員長、収めるために私の質問はこれで終わりますが、最後にその点についての御答弁をお願いいたします。

○安倍晋三内閣総理大臣 中国は世界の成長センターでありますし、先ほど申し上げましたように、日本は中国に投資をし、利益を上げておりますし、また中国に輸出をし、大きな利益を上げています。
 一方、中国は、日本からの投資によってたくさんの雇用をつくっているわけでありますし、日本にしかできない半製品を中国に輸入をし、それを加工して世界に輸出することで大きな利益を上げている、つまりそれこそが切っても切れない関係であって、これを認識することが大切なんだろうと思います。
 その中において、ああいう例えば尖閣で問題があったからといって、日系企業に対して言わば向こうでのビジネスを阻害する、襲撃をしたり不買運動をするということになれば、日本は投資を控えるわけでありますし、世界はそれを見ていて、これじゃ安心して投資できないなと思うんですね。これは、中国の経済にとって著しいこれは毀損をする、被害が出てくることになる。そのことも中国に、よく認識をして国際社会においてちゃんとマナーとルールを守る国だと示すことこそが中国の未来につながっていくということを我々もよく話をしていく必要があるだろうと思います。

○舛添要一 終わります。どうもありがとうございました。

○石井一委員長 以上で舛添要一君の質疑は終了いたしました。(拍手)
 これにて外交に関する諸問題についての集中審議は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。

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