国政報告
参院予算委員会
参議院予算委員会

平成25年2月19日

    

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○石井一予算委員長 それでは、最後に、舛添要一君の質疑を行います。舛添君。

○舛添要一 今日は、安倍内閣の経済政策について主として御質問いたしたいと思います。
 渡辺喜美さん、山本幸三さん、そして私で十二年前からこのインフレターゲットを含めて大幅な金融緩和をずっと訴えてきました。あのころは我々は自民党の中で少数派でしたけれども、十二年たってやっと安倍総理がこういう大きな決断をしてくださった。そしてまた、麻生副総理の御努力でG20の結果、今週は株高、また円安ということで非常に順調な動き出しをしておりますけれども、総理が今回こういう大胆な金融政策ということに踏み切った最大の理由は何でしょうか。

○安倍晋三内閣総理大臣 私も、総理を辞めて五年間、いろんなことを考える時間がございました。特に三年三か月の野党時代、外から政権を見るという初めての経験をしたわけでございますが、その結果、やはりこの十四年間、十四、五年間続いているデフレ脱却をしなければ経済は成長していかないし、税収だって上がっていかない、財政再建だってできない、このままこのデフレが続いていくということは国民の精神にも悪い影響が及んでくるという考えに至ったわけでございますが。
 そこで、第一次安倍政権の寸前に、その同じ二〇〇六年、私が官房長官のときに量的緩和を日本銀行がやめたわけでございます。あのときは小泉政権でございましたが、私は官房長官として、日本銀行側に何とかこの緩和を続けてもらいたいというお願いをした経験がございます。
 実はその前に、森政権時代に官房副長官をやっているときにゼロ金利からの離脱ということがございました。当時も、当時は宮澤大蔵大臣で、その際もお願いをしたわけでありますが、それを振り切られたという経験からして、やはりこれは舛添先生が言っておられるインフレターゲットしかないというところに思い至ったわけでございまして、今回はそれを主張させていただき総裁選挙を戦い、そして総選挙においても大胆な金融緩和を主張したわけでございます。

○舛添要一 今いみじくも総理おっしゃったように、私は、やっぱり過去大きな失敗を日銀がやってきたと。それは今の、二〇〇六年の金融緩和をやめたこと、その前は二〇〇〇年の八月です。もう振り返ってみたら、ここから悪くなったって明らかに分かるんです。さあ、そのとき責任取りましたかということなんです。
 私は、昨日、もう一遍日銀法を読み返してみましたけれども、やっぱりいろんな観点から日銀法、これは同僚の皆さん方にも御提案申し上げたいんですけれども、国会の場でももう一遍逐条的にちゃんと見直した方がいい。
 その理由を申し上げますと、まず第一点は、今、これ、総理と私は認識を共有しているかどうかを確かめたいんですけれども、国民の代表である政府、これが目標を決定する、日銀は、独立性はあるけど、政策手段について独立性があって、そして専門家集団としてきちんとそれをやる、そしてその目標に達するように努力する、それでよろしいでしょうか。

○安倍晋三内閣総理大臣 今回の我々の金融政策をめぐって様々な議論がございました、G20でもそうなんですが。その際、何人かの有名なエコノミストは、今委員がおっしゃったように、選挙によって選ばれた高官が目標を決めて、そして手段においては中央銀行がそれを進めていく、これが一番正しい姿ではないかと。
 つまり、選挙によって我々は責任を取るわけであります。つまり、目的を設定したことがうまくいかなければ、その目的が間違っていればその責任を取るわけでありまして、他方、その目的に向かって、プロである中央銀行がその目標に向かって手段をうまく使うことができなければ、それはそれで責任を取らざるを得ないと、そういう考え方は私は一つの考え方として傾聴に値するだろうと、このように思っております。

○舛添要一 したがって、どの役所でも、大臣が指示してできない、政策きちんと実行できなきゃ、それをやった役人の責任になって、どんな組織でも責任を取るんです。責任を取らないでいいということに、それが独立性ではないんだ。道具の独立性、このことからも一度日銀法を見直した方がいい。
 それからもう一つ、これいろんなところで総理とも御議論いたしましたけれども、私は、やっぱり雇用の確保ということを日銀の目的にきちんと書く。理念とか目的とかはっきり書き分けていないんです。なぜそういうことを言うかというと、日銀法はインフレを避けたいと、インフレ阻止という言葉がずっと前面に出てきた。それはワイマール共和国のようなハイパーインフレがありますけれども、だけど、過去二十年間デフレと戦ってきたときに、デフレと戦うという問題意識がないんですよ、この日銀法には。ですから、そういう意味で、是非これは、十五年前の、九七年に改正して九八年の四月一日から実行されました、そこもちょっと考えた方がいい。だから、私は雇用の確保ということを申し上げているんですけど、その点いかがでしょうか。

○安倍晋三内閣総理大臣 自民党におきましても、今委員が御指摘になった点からも、日銀法を改正すべきだ、そして雇用について、これははっきりと書いていないわけでありますが、理念のところに雇用ということを読めるというものがあるわけでありますが、これは目的ではなくて理念のところにそう読める条項があるわけでありますが、しかし、やはり実体経済に対してしっかりと責任を負っていただく必要もあるのだろうなと、このようにも考えております。
 いずれにせよ、日銀法の改正については常に視野に入れていきたいと思っております。

○舛添要一 それから、これ、麻生副総理、大変御苦労なさったんですが、私は日銀法の四十条の問題もあると思います。
 つまり、今回どういう御苦労なさったかというと、今回の金融緩和はベースマネーを広げるためにやったんであって、為替操作やるためじゃないんです。そのことを御説明するのは非常に御苦労なさった。ところが、日銀法の四十条の二項に、要するに為替管理は国の仕事なので日銀やれないことになっている。そこで、安倍総理、私は、総理が今これだけの大胆な金融緩和をやろうと思い至った背景は、余りにも二十年というひどいデフレが続いていると。だから、非日常的な、常態じゃないんですね、非日常的、ノンコンベンショナルな政策をやっていいと。だから、今の日銀だって社債買うなんてことやっちゃっているわけです。
 さあ、そこで、今話題になっている外為、外債の購入、これは四十条の一項で日銀はそれできることになっているんです。二項では、為替の安定を目的とするなら国の事務でしかできない、つまり財務省の命令を聞かないといけないよと。こういうことになっているのは、こういう条項があること自体が過去十五年間の経済学の進歩を全く反映していない。つまり、金融緩和をやれば円安になるのは当たり前なんです。
 だから、こんなことを書いているということは経済学の進歩を全く反映していない日銀法だから変えなさいということを言っているんで、これは、麻生総理も安倍総理も私が大臣として仕えた総理なんで申し上げにくいんですけれども、財務大臣でも結構です、どういうふうにそこをお考えか。そして、安倍総理、是非これは新しい経済学を反映した日銀法に変えたいと、今のような点で。これ、お二方の御意見賜りたいと思います。

○麻生太郎財務大臣 日銀法のまず改正の方につきましては、私どもは今回の話で日本銀行といろいろ話をさせていただき、少なくともオープンエンドにするという話と、二%という話と、できるだけ早くという何となく怪しげな、役人用語で言えば何となく前向きに検討しますみたいな話じゃとてもじゃないんで、英語ではジ・アーリエスト・ポッシブル・タイムときちっと、スーン・アズ・ポッシブルなんといういいかげんな英語ではなくて、きちんとした英語で書かないと、あれ即世界中に出ますので、そこで書いてきちんとしたものができ上がったので、当面、私どもの考えております目的は達しておりますので、その意味で、直ちに今、日銀法を改正するとかなんとかという気は私にはありません。
 ただ、常にそういった問題というのは総裁と、総裁というか、日銀と政府が常に話が密にしていかないと、これからの時代というのは、外交経済とか経済外交とかいろんな表現があるんだと思いますが、金融の部分というのが実物経済を超えて大きな部分が物すごく巨大なものになっておりますので、そこのところの理解ができていないともう何が何だか全然分からぬということになりますので、そういったところも詰めて今後話をしていくというところが大事だなと思っております。

○安倍晋三内閣総理大臣 変動相場制以降、言わばこの金融政策というのが極めて経済財政運営においても重要な政策手段になってまいるわけでありまして、その中において日本は十分にこの金融政策を手段として活用できていなかったという私も認識がございます。舛添委員はかなり、十数年前から主張しておられて、自民党では極めて少数というか、舛添先生と山本さんぐらいしか主張して当時はおられなかったわけでございます。
 しかし、その中で、日本の主流派とは違う考えをずっと取って今日に至っているわけでありますが、その中において、やはりこの日銀法も、時代を経て、まあ手段にかかわる外債の購入等については発言を控えさせていただきたいとは思いますが、適したものにするためにどうすべきかということについては、我が党だけではなくて、改革の皆様方等も含めて専門的な知見をお持ちの方々が議論していくことは極めて有意義、どのように変えていくかということを議論していくことは極めて有意義ではないのかなと思います。

○舛添要一 三本の矢の金融政策については時間ありませんのでそれぐらいにしておきますけど、二番目の財政政策、これは皆さん方から既に質問ございましたように、やっぱり効果が基本的には一時的であるということとともに、やっぱりいろんな無駄が出てくる可能性があります。それは、民主党政権下における復興予算にしても使い切れないというようなことがあったんで、これは是非御注意願いたいと思います。
 三番目の成長戦略ですが、私は大臣やっていたときに、日本の医薬品、医療機器、すばらしいものがあって、車を売ってお金をもうけることもできますけど、薬売ってもうかるというのも非常にいいことなんです。それで、是非、成長戦略、具体策がないというので一つ具体的な御提案申し上げたいのは、シンガポールにバイオポリスというのがあります。これは、バイオメディカルというか、そこでもう本当に官民を挙げてアジアで最高水準のバイオ医療をやろうということなんで、私、関西にこういう関西イノベーションの特区がありますけど、結構いい知恵がそろっていると思います。是非こういうものを具体的におやりになって、これ甘利大臣が担当かもしれませんが、そのやっていく過程で邪魔になったやつを切っていくというのが早いんじゃないかと。つまり、いろんな規制があるんですね。
 それから、製薬会社の方々と話していると、物すごい投資にお金掛かる。そうすると、できれば投資減税のようなことをやることによってそれをインセンティブをやる。それから、今、田村大臣も御苦労なさっていると思いますけれども、本当に難病の方々はかわいそうだし、総理のおなかの薬ももっと早く承認できればよかったんですけど、ドラッグラグが四年半ぐらいありまして、今大分縮まってきました。
 そういうことを考えると、やっぱり規制緩和、税制改革、そして国が余り面倒くさいことを言わないで関西なら関西にやらせると、そういう方向でやればいいと思うんで、是非、安倍政権の下で具体的に何かそれを、日本版のバイオポリスをやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○安倍晋三内閣総理大臣 詳しくは厚労大臣、また甘利大臣から答弁をさせていただきますが、今私の薬の例も出していただいたんですが、私の例えば薬の場合は、十年間アメリカよりも認証が遅れたわけでございます。なぜかというには様々な理由があるわけでありますが、シンガポールの試み、私も一度シンガポールに参りました。ちょうどそこでは、いろんなものが集まっているんですね、全て集まっているんですが、そこでは、私が行ったときにはフグのゲノムの解析をしておりまして、フグのゲノムは人間と極めて近い、これを解析をしていくことは人間のゲノムの解析にも近づいていくということでやっているわけでございますが、様々な可能性がございます。
 そして、やはり今、日本においては関西、特に神戸において様々な研究機関、創薬、またスーパーコンピューター「京」において、創薬にも使われているわけでありますし、またiPS細胞についての分析等にもこの「京」は、スーパーコンピューター「京」は使われていて、この周辺に約二百二十から四十の再生医療や創薬のメーカーが新たに誕生しているわけでございますので、そういう意味においては極めて効果は高いんだろうと思います。そこで、そうした特区的なことも考えていく必要があるんだろうと思います。

○甘利明内閣府特命担当大臣 先生が厚労大臣で私が経産大臣のときにライフサイエンスの規制改革の提案をいたしまして、それが今の再生医療の今日につながっていると承知をいたしております。
 今までもいろんな成長戦略がありましたけれども、なぜ実行できないんだと。やっぱり政府のコミットがどれだけ強くできるかだと思います。そういう意味では、再生本部の下の競争力会議で民間議員から提案をされる改革事項、それを本部に上げて、総理から各大臣に指示をすると。言わば宿題を大臣は受けるわけです。その宿題の解答が、いい解答をどれだけ早くできるか、これの競争になるわけでありまして、多分総理の人事査定になっているんだと思いますけれども、政府がコミットして、きちんと規制改革もあるいは基礎研究もやっていく体制を取るということで、安倍内閣が決意を示しているところであります。

○田村憲久厚生労働大臣 舛添先生から御質問いただきましたけれども、本当にシンガポールがこうやってこの医療関連分野を成長戦略にしっかり取り入れておる、これは我々も学ばなきゃいけない部分だというふうに思います。
 今補正予算でも、例えば医薬基盤研究所、これ独立行政法人でありますけれども、ここで創薬をオールジャパンで支援していこうと。大体基礎研究から応用研究に入るとデスバレーなんということを言われて、なかなかそこから製品化していかないという問題がありましたけれども、ネットワークを結んで必要な技術だとか必要な知識というものをここで共有できるようにしようと、こういうようなことも考えておりますし、一方で、iPS細胞等々のこの再生医療に関しても、これトレーニングセンターをつくって、そして人材をしっかりと育てようと、こういうこともこの補正予算に入っております。臨床研究中核病院というのもこの補正予算の中に入っている。
 そして、舛添大臣のときに、今お話がありましたドラッグラグ、デバイスラグ、これどうするんだと。本当に御努力をいただいてきた、その結果が出てまいってきておりまして、今ドラッグラグ、大体〇・一年ぐらいまで、これ申請等々はなってきております、審査の方はなってきています。ただ一方で、開発ラグの方があるものでありますから、これはこれからもうちょっと何とか縮めていかなきゃいけない。特に医療機器の場合、問題でありますから、薬事法の改正を是非ともさせていただいて、そういうことも対応させていただきたい。一方で、甘利大臣とも協力しながら、特区的なものもいろいろと検討していく必要があるのかどうか、これも議論をさせていただきたい、このように思っております。

○舛添要一 薬や医療機器は安全性の問題があります。だから、これは国際的な安全性を守るということを一本入れておけばいいと思います。
 さあそこで、三本の矢、更に成功させるために、総理、あと私、二本矢を、二つ付け加えていただきたい。
 一つは、要するに給料上がらなきゃどうしようもないんです。そこで、マクロ経済の話ばかりしていますけど、ミクロ経済、会社経営の話をもっと見た方がいいと思っています。麻生大臣はもちろん経営の経験もございますので。私は端的に言って、なぜ経営者が今賃上げしないのか。先ほど総理もおっしゃってローソンの例を挙げられるというのは、あれがニュースになるというのは、ほとんどほかの人は上げないからニュースになるんです。
 さあそこで、総理、なぜ経営者、賃上げしないんでしょうか。

○安倍晋三内閣総理大臣 企業の利益の増加が賃金の上昇に結び付きにくい要因としては、バブル崩壊後の日本の経済の成長の鈍化が一つの大きな要因ではないかと思います。つまり、あのときにバブルが崩壊をして、日本はその後、経済は低迷をし続けているわけでありますが、ずっとこのデフレ基調が続いている中において、経営者はどうしても内向きになって、設備投資をするよりは借金を返してバランスシートをきれいにしておこうと、こういうことに走ってしまった。一層、それは雇用を増やす、あるいは給料を上げる、こうして固定費を大きくするというよりも、それはむしろ切っていくという方向に走ってしまったのではないかと、このように思います。
 そこで、問題の解決のためには、政府と経済界、労働界がこれまでの発想の次元を超えて大局的な観点から一致協力して動き出すことが必要であろうと思っております。

○舛添要一 是非総理、経済団体に賃上げしてくれとお願いするだけではなくて、重立った経営者が集まって、なぜあなたは上げないんですかと、これはきちんと聞き取りをやっていただきたいということと、それから、日本では企業のガバナンスの研究が非常に少ないんです。安倍総理のアドバイザーである浜田宏一先生の先生にフランコ・モジリアーニというノーベル経済学者がいます。この方がそういうことを研究しているんですけど、私の知っている限り、日本語の翻訳の本はありません。
 これ、麻生副総理にもお伺いしたいんですけど、私ちょっと調べてみまして、経営者のアンケートを。そうしたら、第一は、売上高が伸びていないから上げないんだと。二番目が、やっぱり世間がそんな相場だから。この世間相場は今度の期待で上がっていくと思います。それから三番目が、仕入価格が上がったからだと。これは円安になったときの問題点。それから、数少ないんですけど、やっぱり外国人株主なんかが増えて配当を払わないといけない。株主の力が強くなった。だから、会社は誰のものなのかと。だから、株主のものでもあるけど、従業員のものでもあるので、一番最後にしか従業員にお金行かない。内部留保はなぜかと。これは世の中どうなるか不確実なのに、今は調子いいかもしれないけど、悪くなったらどうするんだ。とにかくためちゃおうと。
 こういうふうに思っていますけれども、いろんな意味で、グローバライゼーションの中で国際的なガバナンスを企業も取らないといけない。しかし、やっぱり日本的なやり方でいいものもあるような気がするんです。経営者としての御経験から、麻生大臣いかがでしょうか、その点。

○麻生太郎財務大臣 昔、日本の企業の場合は自己資本比率が他のアメリカや欧米に比べて低いと言われておりましたが、今見ますと、少なくとも東証一部上場企業の四三%は実質無借金と言われております。内部留保を多分二百兆を超えておる、表に出ているだけで、と思っております。
 普通、それだけたまりますと、配当に回すか、設備投資に回すか、賃金に回すか、三つのどれかに回すんですよ。回さなきゃ、株主が、おまえ、何こんなに金ためてんだってつっつかない株主がおかしいんですよ。僕はそう思います。普通の株主ならそういうふうに言う。ところが、みんなじっとしておられる。それで、内部を持っていりゃ、これで金利が付くかっていったら全然付かないんですから、単にそこに置いてあるだけ。何か置物と間違えているような感じの人がおられるんだと思いますけれども。
 それで、多分最後に、四番目に言われた、何となくヒラメの目みたいになっているんで、先ほどの総理の話の、ローソンの話がありましたが、例えば北九州に安川電機っていうロボットのメーカーがあります。もう舛添先生のよく御存じの方です。

○舛添要一 八幡です。

○麻生太郎財務大臣 はい、八幡にありますので。
 この会社も、実は円が安くなったときに猛烈な勢いで純利が出ると。これについて、あんたらえらく苦労しているようだから、うちはこれを給料に回したいということを言ったら、何が起きたかというと、やっぱりほかの企業はえって顔をするんですよ。そうすると、あそこが上げられちゃうと、俺のところも上げないと社員が来ねえかなとかね、いろいろ経営者は経営者で横にたたたたたっと広がりましてね、非常に不思議な雰囲気になっております、今。これは正直なところで。したがいまして、是非、今言われたように、どこかが先頭を切ってやらない限りはなかなか上がらない、一つ。
 二つ目は、やっぱりもう一個は、あの貸し渋り、貸し剥がしでは嫌な思いしていますよ。それはもう本当に嫌な思いしていますから、だから、僕はあの思いをするくらいだったらじっとという気持ちが圧倒的に強いのが今の経営者だと思います。正直な実感です。だから、替わった人は違いますけど、オーナーみたいな人で来ている人は、あの銀行屋だけは許さないと、もうずうっとそう思っていますから、はい。それはもう間違いなく、もう会うたびに聞かされましたから、私は、いつの日か見返してやるんだというんで、もうそれを楽しみに俺は働いておると言われたおじさんたちがおられましたので、こういう方たちの気持ちがどうにかしない限りはと思って、ちょっといろいろ、この間、総裁・総理にお願いして、あっちゃこっちゃあっちゃこっちゃいろんなところで話をということを、企業の経営者の方の気持ちをといって少しずつ今やらさせていただいているところです。

○舛添要一 是非、総理、その四番目として、今の会社経営、ミクロ経済、これ配当をどうするかを含めて、例えば官房長官の下でもよろしいので、少ししっかり取りまとめをやっていただきたいと思いますが、いかがですか。

○安倍晋三内閣総理大臣 先ほど舛添委員から重要な指摘がございましたが、会社はそもそも誰のものだということがあるんだろうと思うんですね。アメリカは、これは完全に株主のものという観点から様々な法令あるいはコンプライアンスの仕組みもできているわけでありますが、日本においてはやっぱりそうではないんだろうという考え方があって、これはもう株主のものでもありますが、しかし、それは同時に従業員のものでもありますし、そして、例えば製造業であればその製品を使っているユーザーのものでもあるし、その会社が存在する地域のものでもあるという、公共的な存在であるという認識をみんなが持つことも大切なんだろうなと、もちろん経営者がそういう認識を持つことが大切なんだろうなと、こんなように思います。
 そこで、今、我々は、今御指摘があったように、経団連あるいは同友会、商工会議所と、こういう感じでそのトップにお話をしただけでありますから、それぞれの業態に応じてお話を細かくさせていただく、官房長官を中心にそういうことも考えていきたいと、また甘利大臣と一緒に考えていきたいと、このように思っております。

○舛添要一 五番目の矢は私はやっぱり社会保障だと思っていますのは、うまくいって給料上がりましたと。恐らく順調にいけば、経済界も言っているように少なくとも夏のボーナス、これは上げてもらわぬと困ると。それだけでも効果はありますけど、しかしやっぱり一時的なんですね、給料上がるところまでいかないと。七月二十一日参議院選挙ですから、その前にボーナスが出ています。ボーナス下がれば安倍政権非常に選挙苦しいんじゃないかというようなことも思いますよ。ですから、是非そこは実現するようにみんなで努力せぬといかぬと思います、経済界も含めて。
 さあそこで、給料上がりましたと、使いますかと、給料上がっても使わないで貯蓄に回せばどうしようもないんで。さあそこで、何で使わないんですかというときに社会保障なんです。もう本当に、おじいちゃん、おばあちゃん老後が不安だと、平均寿命を超えた方が老後が不安だと言って、もう本当に百歳まで生きるような方おられますから。それからやっぱり医療、病気になったらどうするんだねということがあります。それから介護です。介護は本人だけじゃなくて家族、私も経験ありますけれども、家族を全部巻き込んでしまう。
 だから、見ててちょっと、社会保障国民会議はつくりましたけれども、少しその問題への取組が遅れているような気がして、これが最後にお金を使わないことになると思いますんで、厚生労働大臣中心に、是非ちょっとこれを加速化していただきたいと思いますが、いかがですか。

○安倍晋三内閣総理大臣 社会保障国民会議において検討を進めていくわけでありますが、当然、来年消費税を上げていくことになっているわけでありますが、一体改革の中においてもこの社会保障改革が極めて重要でありますから、この取組の中において議論を深く、同時にしっかりと進めていきたいと、このように思っております。

○田村憲久厚生労働大臣 今、三党での議論も進めていただいております。もちろん、この国民会議の方でもしっかりとした議論をいたしまして、社会保障、持続可能であるような、そんな制度設計をしていかなきゃならぬと思っておりますが、一方で、やはり社会保障が持続可能で安定的になるためには、所得が上がって、経済が良くなって、税収が増えて、社会保険料も増えるということも大変重要なファクターでございますので、やはりこの経済政策、しっかりと万全を期して、社会保障とそれから経済良くなって所得が増える、これが好循環で回っていって、より安心が生まれる中で消費に回ると、そういうようなモデルを是非ともつくっていきたいというふうに思っております。

○舛添要一 もう一度日銀総裁人事絡みの話をいたしますが、国会同意人事、先ほど与野党の国対で西岡ルールをやめるというようなことが大体まとまったようであります。
 ただ、これいろんな誤解がありますので、行政改革の一環として申し上げたいのは、安倍一次内閣のときに、先ほどの片山虎之助先生が幹事長、私が政審会長をやっていました。そのときに、政審会長が国会同意人事委員会の委員長をやっていました。衆議院にはそういうものはありませんでした、自民党の中でです。
 それで、そのころ、めちゃくちゃにもう役人がリークをして、既成事実化してしまう。あれはだから、自民党で絶対認めないよと言ったので、与野党の対立でも何でもないんです。国民の代表の政治家と、そして官僚が指定席の天下り先をつくる、それをどうするのかと、そういうことの戦いであるんで、ちょっと誤解があるような気がしますけれども、自民党側からこれは認めないと言って、やったんです。
 そしてその後、安倍総理も、私自身は候補者として大変苦労した六年前の参議院選挙があって、その秋に西岡ルールができたと、こういう経過なので、ちょっとそこのところを明確にしたいんですけれども、是非総理にもその認識を共有していただきたいと思います。

○安倍晋三内閣総理大臣 かつて私、自民党で国対の副委員長をやっていた時代に、同意人事でよく役所側から、リークされた後、新聞に載った後国対に持ってこられたことがあって、これはおかしいだろうということがずっと常々議論になったことを私も承知をしております。
 国会における現行の国会同意人事の審査手続について、様々な御議論を経た上で定められたルールであるというふうに認識をしております。現在、そのルールの見直しについて各党各会派において合意がなされたというふうに聞いております。関係者の御努力に感謝を申し上げたいと、このように思います。

○舛添要一 ただ、議運の理事会で聞くんだったら、聴聞例えばするんだったら、私たちの小会派はそこにいないんです。だから、私はやっぱり、同僚の皆さん方にお願いなんですけど、人事委員会のようなものをきちんと設けて、大事なのはそこでヒアリングをすると。例えば大使なんというのもアメリカ上院みたいにやっていいんじゃないかと。
 だから、今、三十六機関二百五十三人、本会議で承認しろといって初めて見て、訳分からないでやっているんです。だから、もう少し、二百五十三人も要りません。本当に大事な人だけでいいですから、必ず聴聞をして、みんなが聞いて納得してやるということをしないと国会のコントロール利かないというふうに思いますが、これは国会マターですけど、是非そういう方向で安倍内閣としてもお考えいただきたいと思いますが、いかがですか。

○安倍晋三内閣総理大臣 確かに、同意人事についても、院の方としてはいきなり名前を出されて見識等分からないという気持ちも、私も一議員としてそういう経験がございます。今の御指摘は一つの見識だと思います。同時に、この人事が滞らないようにするということも大切な観点でございますので、そういうことも含めて検討していく必要があるだろうと思います。

○舛添要一 日銀総裁人事を含めて、私は余り条件付けません、出自がどこだとか、英語しゃべれないと駄目だとか。本当に適した人であればそれでいいと思うんです。
 ただ、問題は、同意人事以外の人事も含めて、とにかく役人の縄張争いというか、自分たちの指定職の天下り先を設けている。
 一つ例を挙げます。
 何も恨みはありませんですけれども、警察、分かりやすいから言いますけど、内閣危機管理監ってずっと警察官僚です。警察だったら危機管理ができるか。北朝鮮のことを研究していませんね、例えば。そういう方が、警視総監がなるんです。そして、金正日の死亡ということについてきちんと対応できなくて、民主党政権は事実上更迭しました。それから、今度、原子力規制庁の長官、これも警視総監出身者です。それは、原子力村じゃいかぬということは分かるけど、原子力の専門家じゃない人がそうであっていいのかと。
 ですから、私は、警察の中にも警視総監出身者は立派な人おられますよ、適材適所。だけど、ちょっとこういう役人の指定席、これは、官房長官は総務大臣で私政審会長のときに大変二人で苦労した思いがありますけれども、役人が天下り先広げるために指定席つくっていくと、これを改めない限り本当の改革はできないと思いますが、最後に総理の御決意をお伺いします。

○安倍晋三内閣総理大臣 それは確かにおっしゃるとおりで、指定席にしない、官邸のポスト、様々なポストがありますが、それを指定席にしないということは極めて重要な点であろうと、このように思います。ですから、それはまさに適材適所で考えていきたいと思います。

○舛添要一 終わります。ありがとうございました。

○石井一予算委員長 以上で舛添要一君の質疑は終了いたしました。(拍手)
 次回は明二十日午前九時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。

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