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国政報告
参議院憲法審査会
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査
「二院制」のうち、二院制の存在意義について

平成25年4月3日 (水曜日)

    

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○小坂憲次憲法審査会会長 ただいまから憲法審査会を開会いたします。
 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査のため、「二院制」のうち、二院制の存在意義について、本日の審査会に東京経済大学現代法学部教授加藤一彦君及び東洋大学法学部教授加藤秀治郎君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
○小坂憲次憲法審査会会長 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査を議題とし、「二院制」のうち、二院制の存在意義について参考人の方々から御意見を聴取いたします。  この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多忙のところ本審査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございました。審査会を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。
 これまでの経験を踏まえた忌憚のない御意見を賜り、今後の調査に生かしてまいりたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。
 本日の議事の進め方でございますが、加藤一彦参考人、加藤秀治郎参考人の順にお一人十五分程度で順次御意見をお述べいただいた後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず加藤一彦参考人にお願いをいたします。加藤一彦参考人。

○参考人 加藤一彦東京経済大学現代法学部教授 まず最初に、国権の最高機関であり、また良識の府であります本院にお招きくださり、心より御礼申し上げます。
 本日、十五分ばかりお話しいたしますが、何分勉強不足のゆえ、至らない点もあろうかと思います。少しでも本審査会のお役に立てればと考えております。
 では、早速中身に入ります。事前にお渡しした簡単な要旨に従いましてお話ししたいと思います。限られた時間でございますので省略するところもあります。
 まず、一番目。
 世界には約百八十の国、共同体があります。その全てを網羅的に調べ上げるのは不可能でありますし、また必要ではありません。日本との比較では、一定の条件を付した方がよいと思われます。そこで、日本の国力、すなわちG20加盟国ということと世界の人口規模に着眼して分類してみますると、次のように分かたれると思います。
 両院制の国につきましては、ここに書いてありますように、皆様方がよく知られている国だと思います。これに対して一院制の国、韓国、サウジアラビア、トルコ、中国、この四つの国が一院制の国でございますが、人口一億人という単位で見ますると、中国のみがこれを超えているということになります。要するに、経済的国力と人口規模に着眼した場合、共産党の一党独裁制を取る中国のみが一院制でございます。このことは、両院制が高いレベルで共通の憲法理解になっているのではないかと思われます。
 次、二の両院制の分類でありますが、両院制を取る場合どのような形式があるかということでございますが、憲法学では、第二院の選出方法に着眼しまして次の三つに分類する場合が多いです。貴族院型、連邦型、多角的民意反映型という三つでございます。
 では、第二院を置く理由はどこにあるのかということでございます。主に次の四つがその根拠と言われております。第一番目は多様な民意の反映、第二番目は第一院の補完機能、第三番目は慎重審議の励行、四番目は議会内の均衡の要請。この四つの理由は、日本国憲法上の国会との関係でいえば、当然、参議院の役割と対応関係性を持つことになります。
 そこで、次の大きい三のところで参議院の事柄について触れたいと思います。
 参議院の存在根拠につきまして、そもそも論というのが確かに一個あろうかと思われます。しかし、このことにつきましては既に皆様方多く知られていることだと思いますので、ここでは次のことだけ確認しておけばよろしいかと思います。GHQの憲法草案は一院制であったと。これに対して日本政府側が猛烈に反対をし、二院制を導入したと。その際に、貴族院の名称から、衆議院と同じようにハウス、両議院という言葉で表現できるようにということで参議院という言葉がその当時造語としてつくられたということを確認しておけばこの部分はよろしいかと思います。
 次に、参議院の存在理由の点について入っていきたいと思います。
 参議院の存在の根拠というのは、先ほど挙げた?から?の理由と当然関係してまいります。日本国憲法上、次のことと対応関係を持つと思います。?の多様な民意の反映に相当するのが憲法四十六条に定める各参議院議員の任期六年半数改選制であること、?の第一院の補完機能に相当するのが参議院の緊急集会の制度であること、?の慎重審議の励行に相当するのが両議院における法律案の議決という形式を取っていること、?議会内の均衡の要請に相当するのが憲法六十条二項など憲法所定事由以外両院は対等であるという点であります。すなわち、憲法上、衆議院の優越領域が極めて限定化されているということであります。
 以上挙げた四つの理由に、もう一つ重要な参議院の存在理由があります。それは、参議院議員の通常選挙は必ず三年ごとに行われます。すなわち参議院議員の通常選挙は定時的定点的民意反映機能があることであります。
 衆議院の総選挙とは異なり、内閣の意思による選挙執行はできません。そのため、内閣は、通常の場合、参議院通常選挙を意識しながら政権運営をせざるを得ないと。この定時的定点的民意反映機能が、恐らく第五番目の参議院の存在理由であろうかと思われます。
 ただし、今挙げた?から?プラス第五番目の特質もひっくるめてでございますが、以上の憲法的機能を参議院が果たし得るのには一つ約束事があります。それは、参議院が全国民の代表機関であるという憲法四十三条に立脚する組織体であるということであります。時折、参議院を地域代表あるいは職能代表と描きがちでありますが、憲法上、全国民の代表機関であるということは、当然、部分代表的要素を排除することを意味します。この点は最高裁判所の判決にもかいま見ることができると思います。
 では次、大きい四番目のところに入りたいと思います。逆転国会、あるいはメディアではねじれ国会という言い方もされると思いますが、ここでは普通の用語法として逆転国会という言葉を用いますが、この逆転国会というのは政治表層の問題であって、両院制の本質的問題ではないと考えております。なぜならば、これは解決可能な課題であるからであります。すなわち日本国憲法の想定内の問題であると、そう考えております。
 両院関係性についてでございますが、私、ドイツをほんの少しばかり勉強しておりますので、ドイツとの比較の上で少しばかりお話ししたいと思います。
 ドイツも両院制に分類しようと思えばすることもできるんですが、ドイツの連邦参議院は日本の参議院とは全く異なります。ドイツの連邦参議院を直訳すると、連邦の評議会となります。議院、ハウス、ドイツ語で言うカマーではありません。これは、ドイツ連邦憲法裁判所及び通説においても、連邦参議院はハウスではないということが明言されております。
 連邦参議院は州の代表機関であり、全国民の代表機関ではございません。そのため、連邦参議院の構成員は州の指示に拘束されます。構成員は全て州政府の首相及び閣僚が兼務いたします。当然、無給でございます。何となれば州政府の給与をもらっているからでございます。
 連邦参議院の構成員は、州の規模によって各州ごとに異なります。最低三名で、連邦参議院の今の構成数は六十九名でございます。ドイツの連邦参議院については大変イメージしにくいと思いますが、日本的にいえば、もしかしたらこう言った方が分かりやすいかと思います。全国知事会が立法権に参加している、各都道府県の人口数によって議員数、議決数が異なる、各知事の指示の下、各議決権は一括して投票されると、そういうイメージで描いた方が分かりやすいかと思います。
 連邦参議院はそういった組織体でありますが、州レベルの選挙の結果、連邦議会、これは日本の衆議院に相当しますが、連邦議会と連邦参議院の多数派が異なるいわゆる逆転国会が発生します。その場合、ドイツではどういう解決を図っているのかということでございます。
 今言った逆転が発生した場合は、日本の両院協議会に近しい法案審議合同協議会が形成されます。連邦議会側からは十六名、連邦参議院側から十六名です。この十六という値はドイツの州の数と同じです。この三十二名で成案を獲得すべく努力をするわけでございますが、かなりの高いレベルで成案獲得はしております。成案獲得率は約八五%です。
 この高いパーセンテージはなぜ確保できるのかと申しますと、連邦議会側の協議委員、日本的にいえば協議委員になると思いますが、それは長老の政治家の方々がおなりになる。また、連邦参議院の側は、そもそもが各州の首相、閣僚でございますので、相当な政治的経験を積んだ方々によって構成されます。妥協案がそこで形成されれば、連邦議会はまず反対いたしません。そういうことで、逆転国会が発生した場合、政権党は何とか行き詰まりを回避すべく努力をしております。
 では、日本の場合はどうかということであります。
 両院協議会が憲法上及び国会法上設けられておりますが、両院協議会は二つの形式に分かつことができます。必要的両院協議会と任意的両院協議会でございます。必要的両院協議会は、成案不成立が前提となります。衆議院の議決を確定させるためです。これに対して任意的両院協議会は、法律案に関し衆議院側がその設置を認めた場合においてのみ形成されます。しかし、成案作成が著しく困難であります。過去を見ましても、昭和二十年代はあったと思うんですが、平成に入ってからは例の政治改革関連四法のみでございます。日本では、両院協議会において成案を獲得する法的環境は、実はそもそもないと見た方が自然かもしれません。
 では、両院協議会についてどうしたらいいのかということでございますが、まず一つは、国会法改正を考えたらどうであろうかということになろうかと思います。それはどういうことかというと、衆議院優越は、憲法所定事由のみなのかと、法律で新たに創出することができるのかという論点と関連します。
 国会法十三条は、既存法律で唯一衆議院の議決に優先権を与えています。参議院側は、従来両院対等として考えていたため、法律上衆議院を優先させるということにかなり消極的であり、むしろ抵抗してまいりました。したがいまして、国会法十三条を除いて衆議院の議決に優先権を与える法律上の規定は今日もありません。したがって、国会法改正で衆議院の優越を認めるという発想は、参議院サイドの態度を改めない限り不可能でありますし、また、私もこれは現実的可能性は著しく低いと見ております。
 もう一つは、既存の両院協議会の組織をどのように変えていくのか、両院協議会の改革をすれば何とかなるんではないかということでありますが、これもかなり難しいであろうというふうに見ております。と申しますのも、現在のような衆議院十名全員与党と参議院十名全員野党では、対立があることを確認する機関で終わるからでございます。
 では、最後にということで、本院には過去の議論の蓄積があるかと思います。河野謙三議長以来の良き伝統であります。これまで、参議院の存在を示すため、重要な三つのプランが出されたと思います。任期六年制の下、長期的視野に立った議論ができる環境を本院は持っているはずだというふうに私は考えております。すなわち、参議院廃止という非常に短期的な視点ではなく、なぜ本日挙げたところの一番最初の、多くの国々は第二院を置いたのかをやはりしっかり見詰め直した方がよろしいんじゃないかと考えております。
 お約束の時間が来ました。これをもちまして、私の拙い報告、終了いたします。
 御清聴ありがとうございました。

○小坂憲次憲法審査会会長 ありがとうございました。
 次に、加藤秀治郎参考人にお願いをいたします。加藤秀治郎参考人。

○参考人 加藤秀治郎東洋大学法学部教授 東洋大学の加藤です。
 時間がありませんので、早速本題に入らせていただきます。加藤一彦参考人の陳述とダブる点がありますので、その点は省略をさせていただきます。
 まず初めにですが、衆参のねじれについて、私は非常に重大な問題だと思っていまして、ねじれの場合は、簡単に言いまして国政は麻痺していると思っております。参議院については、弱い第二院ではなくて、何らかの改革が必要だと思っております。
 それで、衆議院の総選挙になりますと政権選択と言いますが、実はそうでないぐらい参議院が強くなっていると思います。衆議院の優越は形式的な法律論でありまして、長らくそれに気付かないでいたのは、自民党が衆参で十分な議席を得てきたからであります。それで、自民党、公明党の連立政権が成ってからですが、優越している衆議院の総選挙でも自由に政権を選択できるという状況にありません。ドイツの場合ですと連邦参議院だけで決まりますので、連立している政権同士も全く競合関係に入ります。
 ということで、私は、衆議院の優越は部分的であり、半優越とでも呼ぶべきもので、法律の議決で制限されていますから、ということで、総選挙で勝った政党もまた、首相は出せても円滑な政権運営は保証されないというのが現状かと思います。
 それで、国会のことを議論するとき、私は、立法府だということで法律を作るところだというイメージを持たれると思うんですが、同じ議会といいましても全く異なる二つの類型がありまして、どちらも日本人にはなじみがあるんですが、どういうわけか、議会についてはアメリカとイギリスの相違をほとんど認識しないまま議論がされています。
 基本的には、議院内閣制か大統領制かによって根本的に異なるわけでありますが、議院内閣制の場合、極端なことどうなっているかといいますと、イギリスのバジョットの有名な本で、「イギリス憲政論」でありますが、下院の最も重要な機能は立法機能ではなくて首相の選出である。首相の選出は総選挙が終わりますと自動的に決まりますので、議会をやっているようなものではありません。ということは、狭義の立法機能はどこが担っているかといいますと、与党の内閣が実質的に担っているわけです。
 ということは、イギリスとアメリカは全く違うわけで、分けて考えなきゃいけないのでありまして、この点、ポルスビーというアメリカの政治学者が非常にきれいな形で二つを分けて議論しています。日本の国会についての議論が混乱しているのは、この二つについての相違をわきまえない議論が多いからであります。
 立法作業の議会、これはドイツ語的な表現を使いますが、アメリカでは、英語では変換の議会と言いますが、立法の必要な問題を明確にして法律にしていく役割を独立的に果たす議会が変換の議会。アメリカが典型で、社会の要求を法律にする。オランダ、スウェーデンもです。
 これに対して、イギリスは論戦の議会でありまして、アリーナ、闘いの議会というふうに言います。議会は公式の論争の場でありまして、有権者に対立点を明確に示せればそれでよいと考えるもので、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリアなどがそうでありまして、ここは立法部とはいうものの、議会では与党は内閣の法案を成立させることが任務でありまして、野党は、それを阻止したり修正したりするということよりも、批判をするということであります。
 五五年体制下の野党とちょっと混同されがちですが、阻止、修正ということではなく、次の選挙のための批判をするというものであります。このような議会は政権交代が可能でないと意味を持ちませんので、日本ではなかなか理解しにくかったかと思いますが、現在はその状況が整いつつあると思います。
 それで、両院制、三つありますが、先ほどのお話にもありましたので、貴族制、連邦制、参議院型ということでありますが、日本の場合は参議院型というのを取っているわけでありますが、創設時にほとんど議論がなされていないで、どんな両院制にするのかということが議論されていません。戦前は貴族院型ですから、民主的な方向への変革を衆議院が進める、それをチェックする、保守的なチェックをするのが貴族院というんですが、それに代わる参議院として何をやるのか、非常に曖昧なまま推移をしてきていると思います。
 それで、参議院の選挙制度についてはすぐ独自性というようなことを言いますが、これは混乱のもとでありまして、そこにイタリア出身でアメリカの代表的な政治学者サルトーリという人の定式を引きましたが、一方の優越が明確で両院の権限が不均衡、衆議院がもっと強ければ両院の勢力の構成は似ていなくても構わないけれども、似ているならば似なければいけないということでありまして、私なりの訳のようなことを掲げますと、参議院の権限が弱ければねじれは放置してもよいが、権限が対等なら両院で与野党の似たような勢力関係を保たなくてはいけないということであります。ですから、参議院だけ独自の選挙制度などということは根本をわきまえない議論ではないかと私は思っております。
 憲法制定の経緯では、先ほどお話がありましたが、マッカーサーが一院制でいいんじゃないかというとき、部下が、まあ日本に譲ってもいいというところで、参議院つくりたいという話を出てきたとき割と簡単に認めますが、そう検討しないままで来たもので、憲法上、参議院の権限は強力なのでありますから政党化するのは必然的であります。しかし、政党化されない参議院が可能であるような形で日本では参議院のことをずっと議論してきたと思います。
 それで、改革の方向性としましては、暫定的な結論を申し上げますと、私は権限関係を変えることは絶対必要だと思っております。そして、それは参議院をただ弱くすることではなくて、両方残す場合も、参議院の実質的な力を増大させる可能性があると思っています。遅らせる議院、修正の議院ということであります。それで、両院制で組織、構成を変えようというのですが、これは簡単ではありませんし、下手に変えるとここが問題であります。
 二番目は、手続、運営をどうするかというんですが、これは幾らでもやることがあります。国会法は非常におかしい法律でありまして、憲法上は議院自律権というのが決められているにもかかわらず、参議院は参議院のことを参議院で決められないということであります。あとは、党議拘束を衆議院、参議院またいでおります。ですから、やるなら党議ではなくて衆議院は衆議院の会派規律、参議院は参議院の会派規律としなければいけないと思っております。
 あとは、党議拘束を掛ける時期をいつにするかということでありまして、基本的には権限を変えなければいけないと思いまして、私は衆議院の再議決のハードルを過半数に下げる、それで再議決の前に一定の冷却期間を置くということで、遅らせる議院として、その間、六十日ぐらいが適当かと思いますが、世論調査などが行われますから衆議院も単純に再議決をしないと思います。そうしますと、六十日の間に参議院の言っていることの方がいいじゃないかということになれば、権限は弱まりますが、参議院の主張したことが実質上実現する道が開かれると思います。
 そういうことで、ほかの案を考えるとしたら何があるかということでありますが、一院制的なものに移行するというんですけれども、一つは、日本ではありませんが、両院合同会。ノルウェー、オーストラリア、ブラジル、インドなどがやっているんですが、各院の代表者が集まるのではなくて、両院の議員がそのまま集まって採決をするという、これであります。これをやるとどうなるかといいますと、参議院選挙のたびに今では連立の組替えの可能性が出ているわけでありますが、今度は参議院と衆議院、現在、数を大まかに言って衆議院二に対して参議院一ですから、参議院の変化がもろに、拒否権を持っている参議院の力がそのままストレートにでなくてサイズに応じた形で連立を組めばいいということで、かなり柔軟な形になってくるかと思います。
 これをやりながらということで、私は、思い付きのようなんですが、参議院選挙のたびに、例えば二〇一三年に当選した方は六年後に半減する、さらに六年後は改選なしということを決めながらやるとかというようなことをやれば、段階的に、いきなり廃止というよりは円滑にいくのではないかということで、思い付きのようでありますが、こういうことを書いたことがございます。
 結論的にどんなことが言えるか。私の考えですが、まず三つの案でありますが、一番目が、衆議院の再議決の要件を過半数にする、再議決までに六十日の冷却期間を置くということでありまして、これをやりますと、両院を存続することになりますが、参議院は修正の議院ということで、権限は弱まりますが、実質は強くなると思います。これは、私がこれまで参議院議員の方にこの案を述べさせていただいたことがあるんですが、最初は、結論を言いますとほとんどの方は賛成しませんが、三十分なりなんなり掛けてお話ししますと、それもいいですねということで、かなり御理解をいただけると思います。
 二番目は、両院協議会の改革で、これは国会法の改正でできることでありまして、現在の国会法の両院協議会は、まさに機能しないように工夫してつくったような両院協議会になっておりまして、これでは動かないのは当然であります。
 御承知のように、各院を代表する協議委員ですが、半数でございますが、賛成側から十人、反対側から十人出てきて、成案は三分の二なきゃいけないということで、これでは動きようがありませんが、ここにも衆議院の優越というようなことを少し盛り込んでもいいのではないかと。それで成案が出る可能性が出てきます。あとは、成案の条件は過半数に下げて、どうせその後、衆議院、参議院とその案を審議するわけですから、ここでの規定がそのまま生きるわけではありません。したがって、両院協議会の在り方は早急に改めた方がいいと思います。
 それで、三番目が一院制への移行案でありますが、二つほど書いておきました。
 一つは、経過措置として、先ほど言いましたように、両院合同会などを設けてそれを活用するんですね。そうしますと、段階的に一院制に移行するのはスムーズにいくと思います。それで、現在、定数削減のことが議論されていますが、簡単に言いますと、定数削減しないまま衆議院議員も参議院議員も合わせて一院制にすれば、ここの両院合同会みたいなものが本会議になるわけですから、かなり難しくなく移行することができるかと思います。それを、あと一気に行う方法もあろうかと思いますが、いずれにしても憲法の改正が必要ですが、現在のような形のものを放置するということは非常に問題が多いと思っております。
 それで、そこの表で簡単に二つのタイプを並べましたが、日本は議院内閣制を基本としていますから、イギリスのように国会は討論するところというところで、与党が作った法案を通す、野党はそれを批判する、次の選挙で勝てばいいというものでいいと思いますが、その場合は、下院の優越を明確にして実質的に一院制に近い運用にするか、あとは一院制にするということであります。
 アメリカのようにやれという議論が日本でも出るわけでありますが、根本的にどこが違うかといいますと、補助スタッフですね。日本はほとんどいないに等しいのでありまして、現在公費で雇われている秘書の方は三名いますが、失礼ながら、名前が政策秘書と付いている方も含めて全部総務的な秘書ですね。少し中途半端に増やしたところで選挙対策に従事するような秘書の方が増えるだけで、アメリカですと上院議員は四十七人、平均ですね、下院議員ですと十七人も秘書がいますから、政策立案というようなことは議員が担える条件が整っておりますが、日本はそういう状態にないのにアメリカのようにやれということで、名前が立法府だということで、法律を作るところが国会だというイメージにとらわれて議論していますが。
 イギリスの議会は全くそうなっていませんで、議員会館なども実にお粗末なもので、このポルスビーが、翻訳もありますが、議員さんがコートを着て、そのコートをどこに入れるかというと、議員食堂の横にロッカーがあるだけで、そこに置く。そこで物を出したり入れたりしていると、後ろを食堂のウエートレスさんが通ってぶつかってしまう。そういう状態でイギリスは議会が運営できるということは何かというと、非常にシンプルな、議員数は多いけれどもシンプルな形で運営できる国会というものをつくっているわけでありますね。
 ですから、日本で、アメリカとイギリスの相違をわきまえないで、何となく立法府なんだからこれをしろ、あれをしろということを言っているのは非常に議論としておかしいのではないかということであります。
 参議院で申し上げるには非常に失礼な意見を申し上げさせていただきましたが、時間になりましたのでここまでとさせていただきます。
 どうも御清聴ありがとうございました。

○舛添要一 両参考人、今日はありがとうございます。
 お二方の御意見をいただきたいと思いますが、私が今から申し上げることについての意見ということでございます。ポイントは、衆議院と参議院を役割分担論という形で構成し直すとどうなるか、これは憲法の枠内、枠外を込めて大胆な発想でいきたいと思いますが、それと一票の格差の問題もそこにかかわってきます。
 先ほど来議論がありますように、同意人事、この前参議院で否決された同意人事、これは本当に衆参が全く平等の権限を持っているのが国会承認の同意人事であります。したがって、三分の二の可決というようなこともなければ衆議院の優越ということもありません。したがって、どちらかの院で否決されればまた別の人を選ばないといけないと。これで例えば日銀の総裁人事、副総裁人事の時期がずれたりというようなことがありました。
 そこで、役割分担論で、今人事の話しましたけど、一つはアメリカの上院というのを念頭に置きますと、大使であるとかこういう重要な組織のトップを選ぶときに、ヒアリングを上院がやって上院が決めると。例えばこういうことを、同意人事について参議院の仕事ということにできないのかなというのが一案、例えばですね。
 それから、そのときに、じゃどういう参議院をつくるんだというときに一票の格差との問題あるんですけれども、連邦制的な発想で、人口、つまり一票の格差の話ではなくて、四十七都道府県、例えば各県から二人ずつ参議院議員を出すと。したがって、人口、一票の格差はめちゃくちゃです。
 ただ、これは発想として、そういう発想でのハウスの構成というのもあり得るし、これは憲法違反なのかどうなのか、憲法でそこまで決めているのか、両院でもって構成しなさいとは決めているけれども、どういう人が議員になって、どういう選挙方法をやれということは法律マターではなかったのかなということになります。
 そして、あえてだから、一票の格差論は先ほど来ありますから言いますと、もちろん一人一票、平等でないといけないかもしれないけれども、東京のように非常にインフラ含めて進んだところと過疎地で進んでいないところで一票の格差はあっていいじゃないかと。だから、非常に困っているところは豊かなところより声が大きくなっていいじゃないかという意見があってもいいんではないかなというのをあえて申し上げたいというふうに思います。
 したがって、そういうことも含めて根本的に考えないと、ねじれ云々だけの話ではこれからのこの国の在り方、国の仕組みというのはうまくいかないんじゃないかなと、そういう感想を持っておりますので、御両方の御意見を賜りたいと思います。

○小坂憲次憲法審査会会長 両参考人への質問でございます。加藤秀治郎参考人から今回はいかがですか。

○参考人 加藤秀治郎東洋大学法学部教授 どうもありがとうございます。  役割分担につきましては、これは十分やれることだと思いますので、憲法を改正しないといけないこともあると思いますが、改正しないでできる範囲として、例えば法律案件については先議院、後議院という決め方しかありませんので、これこれの分野は参議院が先にするという慣習というんですか、そういうのをつくるというのでも随分実質は大きく変わるんではないかと思います。
 それで、一票の格差について、私は衆議院は二倍未満というのを守った方がいいと思いますが、参議院については、これは憲法学者は多分いろいろ言うと思いますが、公選であればいいという割り切り方をした場合、法律で参議院についてはそうしないということを決めて選べばそれは可能で、例えば道州制を導入した場合、参議院については道州の代表を参議院に送るということで、アメリカですと、物すごく人口の少ないワイオミングは、下院議員はたった一人しかいないんですが、そこでも上院議員は二人いる。人口の多いカリフォルニアは、とんでもなく下院議員が多いですが、そこからも上院議員は二人みたいに、これは決めてしまえばそれで通ることですから、そういうことは自由に議論してやったらいいなと思います。

○小坂憲次憲法審査会会長 加藤一彦参考人、お願いします。

○参考人 加藤一彦東京経済大学現代法学部教授 第一番目の御質問の役割分担論だと思うんですけれども、これは国会同意の人事がかなり多いんですね。それで、各個別法律でいろいろ書かれていて、各個別法律で全て両議院一致の議決に今改められているはずです。
 そうした中で、私、先ほどどなたかの質問に対して答えたのは、行政監督をするということは、結局は人に対する統制をしなければならないからという意味合いで、国政調査権とあとは人事の承認権の参議院の、例えばこれは先議事項でもいいと思うんですけれども、何らかの独自性というのは僕は図ることができるであろうと、そのときに、両議院一致の議決ではなくて参議院のみの議決にするという法律改正も当然あり得るんであろうと思います。
 それは何となればというのは、人事案件を出すのは内閣でございますので、衆議院ではそもそももう多数派を形成しておりますので、そうすると、そうじゃない場合も含めて、ねじれがある場合、ない場合もひっくるめて参議院で独占的に行うというようなことはあるんであろうと思います。ただ、これは法律改正ですので、さほどハードルは高くはないと思うんですが、ただ、内閣としてはかなり厳しい法律改正になろうかと思います。
 二番目は、今、恐らくはここなんでしょうけれども、憲法を改正しないで道州制を導入し、そして各道州において一定の議席を与える、そして格差は何倍あってもいいんだというのは、恐らくは私は違憲になると思います。それは、昨年の最高裁判所でもそうだと思うんですけれども、やっぱり格差訴訟というのは権利の問題なんだと、有権者サイドからすると、投票権の平等性の問題なんだというところがありますので、ただ単に制度だけのアプローチではうまくいかないであろうと。
 恐らくは、今日の私の守備範囲を超える問題だと思うんですけれども、憲法を改正した場合においては、恐らくは道州制を導入しなければこの国、駄目だと思います。いわゆる地方分権論という、地方自治法の改正では足らないです。その際には、ただし第二院を置く参議院は全国民の代表機関であることをやめることです。そうしない限りは無理です。というのが私の今まで勉強してきたことの見立てでございます。

○舛添要一 ありがとうございました。

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