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国政報告
参議院憲法審査会
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査

平成25年3月13日 (水曜日)

    

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○小坂憲次憲法審査会会長 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査を議題とし、「二院制」について、事務局から報告を聴取した後、自由討議を行います。
 まず、事務局から憲法調査会報告書について報告を聴取いたします。情野憲法審査会事務局長。

○情野秀樹憲法審査会事務局長 本日の自由討議に先立ちまして、憲法審査会の前身である憲法調査会における二院制に関する議論の概要につきまして、便宜私から御説明をさせていただきます。
 お手元にお配りいたしましたレジュメに沿って御説明させていただきますが、あわせて、お手元の二院制と参議院の在り方に関する小委員会調査報告書を御参照いただきたいと存じます。
 まず、憲法調査会における調査の経過でありますが、レジュメの三ページ目に表にさせていただきました。
 参議院憲法調査会におきましては、憲法全体の調査については、小委員会による分割方式ではなく、本調査会で行うことを基本としていましたが、二院制については、参議院が特に責任を持って検討をすべきテーマであることから、柔軟かつ機動的に調査できる小委員会方式を取り、小委員会における調査が中心となりました。二院制と参議院の在り方に関する小委員会が設置されましたのは、五年目の平成十六年二月でございます。
 ここでは、参議院を守るための議論と受け止められないよう、最初に二院制ありきということではなく、国民にとって一院制と二院制のどちらが望ましいかという立場から、良識の府として議論することが大事であるとの意見を踏まえて、熱心な議論が行われました。
 小委員会は、都合八回開かれ、平成十七年三月、大方の合意により、調査報告書が取りまとめられ、舛添要一小委員長から関谷勝嗣会長に提出されました。
 以下、小委員会における議論の概要を申し上げます。
 小委員会では、第一回から四回にわたって参考人から意見を聴取し、それを踏まえて委員間で意見が交換された後、小委員長がそれまでの議論を内容に従って論点ごとに整理されました。それがレジュメの一ページ目に論点整理として挙げました(1)から(5)までの五項目でございます。それらは細目に分けられておりますが、大項目だけを読み上げさせていただきますと、(1)一院制・二院制の長所・短所、是非、(2)参議院の機能―特に独自性を発揮すべき分野、(3)両院間の調整―意思不一致の場合等の調整の在り方、(4)参議院と政党との関係、(5)参議院の構成の在り方・選挙制度の五つでございます。
 小委員会では、以上の五つの論点を中心に議論がなされ、レジュメの二ページ目にまとめとしてお示ししたように、その結論が当時の調査会を構成している会派である自民、民主、公明、共産、社民の五会派がおおむね一致した共通の認識が得られたものと、意見が分かれたため、更に今後検討が必要な今後積極的に検討すべき問題の二類型に分けて整理されました。
 次に、このまとめについて申し上げます。
 最初に、共通の認識が得られたものでございます。(1)から(5)の五点について、共通の認識が得られたとされております。
 一つ目は、二院制を堅持することでございます。
 その理由といたしましては、慎重審議を通じて国民の総意を正確に反映し、衆議院の専断を抑制し、補完することを目的とする二院制の趣旨は今日においても適切、妥当なものであること、あるいは、一億人以上の人口を有する我が国では、多様な民意を反映させるためにも二院制が望ましいといったことなどが挙げられました。
 ただ、迅速な政策判断が求められる現代にあっては、効率的な意思決定と円滑な政権交代を可能にすることは、二院制を採用する場合でも忘れてはならないとの指摘もなされました。
 共通の認識が得られたものの二つ目は、両院の違いを明確にするため、参議院の改革は今後とも必要であり、また、選挙制度設計が極めて重要であるという点でございます。
 この点に関して、二院制の意義が薄れがちと言われる背景には両院の権能、選出方法、役割が似ているという事情があり、それをそのまま維持すべきではなく、両院の違いを明確にすることが国民に理解を得る上でも重要との意見が出されました。改革の方向としては、抑制均衡・良識・再考の府としての役割をはっきりさせるべきであるなどの意見が出されました。
 また、選挙制度につきましては、衆議院と異なるものとすること、そのためには政党の側面より個人の側面をより重視すべきことが意見の多数を占めました。一票の較差問題につきましては、参議院の投票価値の較差是正は喫緊の課題であるなどの意見が出されました。
 共通の認識が得られたものの三つ目は、参議院議員の直接選挙制は維持すべきであるという点でございます。これは、両院の一翼を担う一院という立場から譲れない点であり、任命制、推薦制はもちろん、間接選挙制も好ましくないというのはほぼ異論のないところでございました。
 共通の認識が得られたものの四つ目は、参議院は六年間と任期も長く、しかも解散がなく安定しているなどの自らの特性を生かして衆議院とは異なる役割を果たすべきであるという点でございます。
 具体的に、共通の認識が得られた項目について順次申し上げます。
 まず、長期的・基本的な政策課題への取組につきましては、参議院は、長期的、基本的な政策課題を重点的に行うという点で意見は一致いたしました。具体的には、年金や教育等の問題、長期的視点の要求される条約等の外交案件について取り組むべきであること、あるいは、参議院の調査会の立法機能を強化すべきことなどの意見が出されました。
 次に、決算審査の充実につきましては、参議院はチェックの院として決算審査を重点的に行うべきことで意見が一致いたしました。決算審査の実効性を高めるための方策として、決算審査の審査結果に拘束力を持たせることなどが挙げられました。
 次に、行政監視・政策評価の充実につきましては、参議院をチェックに重点を置く監視の院として、権威を高めることが重要である点で意見が一致いたしました。行政監視、政策評価の個別の対象としては、ODAや政省令等が挙げられました。
 共通の認識が得られたものの五つ目は、現行憲法の衆議院の優越規定はおおむね妥当であり、したがって、両院不一致の場合の再議決要件の緩和には慎重であるべきであるという点でございます。法律案の再議決要件を単純多数決に改めるべきである等の指摘もありましたが、それでは衆議院の権限強化となり、行政権の強化につながるといった意見が出され、最終的に、憲法の定める衆議院の優越規定はおおむね妥当との結論となりました。
 それでは次に、今後積極的に検討すべき問題に移らさせていただきます。これらは、意見は分かれましたが引き続き真摯な検討がなされることを望むとされたものでございます。レジュメの二ページ目にお示ししましたように、(1)から(5)の五項目が挙げられております。
 それぞれについての議論を簡単に御紹介いたしますと、(1)の参議院と政党との関係につきましては、両院にまたがる党議拘束が参議院の独自性を阻害する、あるいは、参議院は行政に入らず、国民の側に立って監視することで独自性が出るなどの意見が出されました。
 (2)の参議院の構成・選挙制度につきましては、衆議院と異なる選挙制度にすること等が意見の多数を占めましたが、具体的な選挙制度については意見が分かれました。
 (3)の会期制につきましては、参議院はチェックの院として会期制を廃止し通年国会とすることや衆参同一会期の要否について検討が必要であるとの意見も出されましたが、見解が分かれました。
 (4)の予算、特定の条約・法案等の参議院における審議の簡略化は、参議院の独自分野における審議充実のためには、予算あるいは衆議院で全会一致で可決した法案などの特定の議案については、審査の省略や簡略化も必要ではないかということで検討されたものですが、見解が分かれました。
 (5)の独自性を発揮すべき具体的分野等に記した事項からは、五点が挙げられております。
 @の会計検査院の位置付けは、会計検査院を国会ないし参議院の附属機関とすべきであると主張された問題でございます。
 Aの同意人事案件につきましては、米国では上院の専権事項とされておりますように、ヒアリングを含め参議院が中心となって審査してはどうかとの意見に基づいて議論がなされました。
 Bの司法府との関係とは、司法府に対するチェックを含めた関係を見直したらどうかといった意見に見られる問題でございます。
 Cの国と地方の調整は、参議院の地域代表的な性格を重視する考え方に鑑み、参議院が国と地方の関係を扱うこととしたらどうかとの意見に基づくものでございます。
 Dの憲法解釈機能・違憲審査的機能の問題は、最高裁判所が容易には統治行為の憲法審査に踏み込まない状況があり、また内閣法制局の憲法解釈が絶対的地位を占める現状は不健全であり、参議院に憲法解釈機能、違憲審査的機能を持たせるべきであるという議論が背景にございます。
 以上、五つの項目が今後も引き続き真摯な検討がなされるべき問題として整理されたものでございます。
 二院制と参議院の在り方に関する小委員会の報告書で示されました共通認識は、憲法調査会において確認され、おおむね妥当とする意見が大勢を占めました。平成十七年四月の憲法調査会の調査報告書も、小委員会の報告の趣旨を踏まえたものとなっております。
 続きまして、憲法調査会の報告書が出されましてから既に七年以上が経過しておりますので、その後の二院制を取り巻く情勢について、最後にごく簡単に御紹介させていただきます。
 まず、いわゆる衆参のねじれの状況についてでございます。平成の時代に入りましてから、頻繁にねじれの状況が生じてまいりました。一方、憲法調査会が活動しておりました時期は平成十二年から十七年にかけてでございまして、その間は衆参共に政権与党が多数を占めておりました。その後、平成十九年及び二十二年の通常選挙の結果、また、今般の衆議院総選挙の結果、参議院で与党が多数を占めることができない、いわゆるねじれの状態となりました。
 この間、衆議院から送付された法律案や予算について参議院が否決するといった事態が見られ、同意人事案件について参議院の同意が得られないという事例も見られました。特に挙げさせていただきますのは、予算や法律案が衆議院の優越によって成立したことはありましたが、両院協議会につきましては、そこで合意に至り、その成案が成立した事例は、平成以後、政治改革関連四法案の一件しかないという点でございます。
 最後に、最近の一院制論に簡単に触れさせていただきます。
 憲法調査会後の二院制を取り巻く情勢として、一院制に移行すべきであるとの議論が活発化したことが挙げられるかと存じます。政党の中には、一院制への移行を主張されるところも出てまいりました。
 また、超党派の国会議員で構成されるいわゆる一院制議員連盟では、衆参対等統合による一院制国会の実現を提唱されております。昨年の四月にそれを内容とする憲法改正原案の衆議院への提出を試みられましたが、発議要件を満たしていないとして、受理されるには至っておりません。
 以上、雑駁ではございますが、二院制について憲法調査会の御議論等を御説明させていただきました。ありがとうございました。

○小坂憲次憲法審査会会長 以上で事務局からの報告の聴取は終了いたしました。
 これより自由討議に入ります。

○小坂憲次憲法審査会会長 それでは次に、二院制と参議院の在り方に関する小委員会の委員長も御経験された舛添要一さん。

○舛添要一 今、事務方から御説明ありました二院制と参議院の在り方をめぐる小委員会の委員長を務めさせていただきました。
 九年前の平成十六年に議論をいたしまして、翌年の三月にこの報告書を出しましたけれども、今事務局長から御説明ありましたように、その当時はねじれ現象はありませんでした。その後、ねじれ現象が引き続いて起こった。ですから、今仮に同じ委員会でやるとすれば、議論の論調はかなり異なったものになるんではないかというふうに思っております。
 今同じ議論をやると、例えば二院制を今のまま残しなさい、それから衆議院の優越は今程度でいいですよということを言えば、それは参議院が自分たちが生き残りたいためにやっているんじゃないかという、そういう御批判が国民から起こることもあり得るというふうに私は実感を持って小委員長を務めた立場から思っております。それがまず第一点であります。
 したがって、このねじれ現象に対して政治が動かない、何やっているんだということがずっと国民から言われてきた、それに対して私たちは何らかの回答を出さないといけないというふうに思っております。
 先ほど、政治改革一件のみで、両院協議会でまとまったことは一度もない。我々も経験していて、両院協議会今からやりますよ、もう時間の無駄だと、結局、結論変わらないじゃないか。それは、両院協議会の構成がそういうふうになっているわけですから、違う答えが出るはずないんですね、よほど事前に議論しておかないと。ですから、私は、両院協議会の構成ということをもう一度考えないといけないとねじれ現象を考えると思います。
 それからもう一つ、先ほど事務方からは御報告ありませんでしたけれども、同意人事です、国会同意人事です。衆参の力関係で、三分の二の再議決要件であるとか、それから首班指名、外交、予算、これは衆議院が優越しております。だけど、全く衆参が同じ力を持っているのが人事の国会承認であります。
 これは、今の日銀の総裁、副総裁、この人事が今問題になっておりますけれども、総裁、副総裁の人事がずれたのはまさにねじれ現象によって同時期に決められなかったからであるわけでありますから、これは仮に参議院が今回もノーと言えばあの人事は決まりません。したがって、政治が動かないという状況になってしまう。じゃ、この同意人事をどうするんですかということも具体的な問題として我々は考える必要があるというふうに思います。
 そこで、方向としては、極論を言うと一院制にしろと。それからもう一つは、衆議院の優越度を更に高めよという議論があり得ると思います。したがって、例えば同意人事についても衆議院の優越性を担保するという方向があると思います。そうでないならば、もう一つの方向は、衆議院と参議院の役割分担を明確にすると。
 例えばフランスなんかですと、フランスの上院は間接選挙で県会議員なんかから選ぶわけですけれども、そういう母体も前提にして、地方分権に関する議論は、フランスは上院が優越です。例えばこういう形で、まあ解散のない院ですから、高い見識と大所高所に立った議論をやるという立場から見て、例えば国の在り方であるとか憲法であるとか、それから先ほど言った中央、地方の関係というようなことについて参議院の役割を優越させるというのも改革であり得るというふうに思っております。
 そういうことを含めて、恐らく八年前、九年前のねじれがなかったときとは非常に違う。憲法改正の議論も今から更に盛んになると思いますけれども、我々は国会議員として、政治が動いていないという国民の御不満に対して、この憲法審査会においてきちんと今私があえて問題提起したような点について議論を深める必要があろうかと思っております。
 ありがとうございました。

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