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国政報告
参議院憲法審査会
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査

平成25年5月22日 (水曜日)
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○小坂憲次憲法審査会会長 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査のため、「二院制」のうち、衆参両院の権限配分及び参議院の構成について、本日の審査会に駒澤大学法学部教授大山礼子君及び一橋大学大学院法学研究科教授只野雅人君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○小坂憲次憲法審査会会長 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○小坂憲次憲法審査会会長 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査を議題とし、「二院制」のうち、衆参両院の権限配分及び参議院の構成について参考人の方々から御意見を聴取いたします。
 この際、参考人の方々に一言御挨拶申し上げます。
 本日は、御多忙のところ本審査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。審査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
 これまでの御経験を踏まえた忌憚のない御意見を賜り、今後の調査に生かしてまいりたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日の議事の進め方でございますが、大山参考人、只野参考人の順にお一人十分程度で順次御意見をお述べいただきました後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず大山参考人にお願いいたします。大山参考人。

○参考人 大山礼子駒澤大学法学部教授 御紹介いただきました駒澤大学の大山でございます。
 本日は、お招きいただきましてありがとうございます。
 時間が限られていますので、早速中身に入りたいと思いますけれども、最初にお断りしておきますけれども、本日は、私の方は憲法改正を視野に入れた改革をお話しするようにということで、只野先生の方は憲法の枠組み内でということで役割分担しておりますので、そのおつもりでお聞きいただければと存じます。
 まず、レジュメのタイトルでございますけれども、「参議院の独自性を考える」ということで書かせていただきました。この独自性と申しますのは、これは国会が発足しました当初から、参議院改革の議論があると必ず出てくるキーワードと言ってよいかと思います。つまり、参議院がどのようにして独自性を発揮するかということが永遠のテーマになってきているのではないかと存じます。
 ですが、では、その独自性というのは一体何を意味するのかということなんでございますけれども、ここにちょっと数式のようなことを書いておりますけれども、独自性というのは、いろいろ権限の分担の仕方などで独自性が出ることはあり得ると思いますけれども、やはり参議院が衆議院と異質であるということが独自性の条件になると思われます。それから、その異質性ということ、これは、やはり戦前からこれも何度も異質性が大事だということは言われてきたようでございますけれども、この異質性ということをどのように確保するかということになりますと、これも、審議の方法の質をたがえるというようなこともありますけれども、やはり構成が異なっているということが一番大きなことになろうかと存じます。
 ということですので、独自性を発揮するためには、参議院が衆議院と構成を変えていくというのが一番早道になろうかと思います。
 ですけれども、そうやって構成を変えることにいたしますと、今度は、下院と異質な上院、つまり参議院が例えば法案審議などについて拒否権を握ってもよいのかという問題が生じてまいります。
 下院の方、日本では衆議院でございますけれども、この選挙制度というのは国民代表として民意を正しく反映させるべくつくられている、設計されているはずでございます。したがって、衆議院の構成というのも民意を反映すべく一番適切な構成になっているはずでございます。そういたしますと、その衆議院と構成が異なるということは、どうしても民意から少し遠くなるということにならざるを得ません。特に、議院内閣制の下では、衆議院の選挙制度というのは政権選択の民意を反映するようにつくられているという傾向がございます。
 それで、その衆議院で示された政権選択の民意によって成立した内閣と参議院の関係をどう考えるのか、ここが一番重要なことになってまいります。この問題を言い換えますと、要は、国民の信託を受けて内閣が成立しているのであれば、その内閣の政策決定を参議院が阻害してよいのか、拒否権を行使してよいのかと、こういう問題になってくるわけでございます。
 実際に世界の各国見ましても、上院の権限が強いと、下院とむしろ異質ではないことが求められる傾向にあろうかと思います。一番典型的な例はイタリアでございまして、ここは平等型の二院制なのですけれども、選挙制度も現在はどちらも完全比例代表制でなるべく同じようにしておりまして、しかも、こちらは両院とも解散制度がありますので、同時解散をすることによってなるべく異質にならないようにしております。それから、日本でも参議院のねじれが問題になってきましてから、同日選論というのがあることは御承知のとおりのところでございます。
 そういうことで、独自性と強い権限というのはどうも相克、お互いに矛盾する関係にあるのではないかということが議論の論点になってこようかと思います。
 そうしますと、独自性を発揮するためには、憲法を改正しまして参議院の権限を若干引き下げるというようなことを考える余地が出てまいります。しかし、そうなりますと、参議院の存在感がなくなってしまうのではないかという懸念が生じます。そこで、問題なのは、拒否権を行使する以外に存在感を発揮する方法はないのか、こういうことだろうと思います。
 それは、私はあるはずだと思います。それはどういうことかと申しますと、そもそも国会審議の意義というのは結果だけではございませんで、当然その経過にもあるはずでございます。現代の政党政治におきましては、その審議の結果というのは政党によってあらかじめほとんど定まっているわけでございますけれども、だからといって国会審議に意味がないかというと、そんなことはございません。審議の経過途中において言論によって国民へアピールする、これが国会の非常に大きな役割のはずでございます。
 確かに、衆議院の中においても、少数派である野党の意見が必ずしも数の力で通るわけではないのですけれども、もし野党の意見が的確なものであれば、内閣や与党もその意向を無視できなくなってまいります。同様に、参議院が少し権限が小さくなったとしても、参議院で非常に的確な議論がなされ、国民もそれを支持しているということになれば、これを衆議院及びその多数派を基礎に存続している内閣が無視できるわけではございません。
 それから、もう一つ重要な点だと思うんですけれども、そうした言論によるアピール、言論の力で審議を充実させて何か新しいことをしていくという面において、現在の参議院というのは衆議院よりも充実しているというふうに私は思っております。
 と申しますのは、衆議院はどうしても党派対立一辺倒の審議になりがちなんでございますけれども、参議院の場合はそこからちょっと距離を置いた超党派的な議論ができるところだと思います。実際に、調査会などにおいて長期的な視野を持った議論がなされておりまして、それに伴った成果も着実に上がっていると思います。ですので、こうした長所を更に伸ばしていくということによって参議院が存在感を高めていくという方法を選択してもよいのではないかというふうに私は思っております。
 そう申し上げましたけれども、しかしながら、参議院の充実した審議というのは、残念ながら内閣法案の審議においてはこれまで十分に発揮されてこなかったように思います。議院内閣制下の議会、国会ももちろんそうですが、においては、一番大事な仕事というのは内閣法案をいかに精査するかということにあると存じます。最終的に内閣法案が通っていくにしても、その過程で国会が民意を反映する国民代表機関として必要ならば修正を加えていくということが、これが一番大事だと思うんですけれども、そういう面では、これは衆議院、参議院を問わず、国会は今まで甚だ弱い、国会の弱点であったというふうに考えております。
 ですので、充実した審議によって存在感をアピールしていくということであれば、それを確保するための手続整備が必要になります。特に、各議院の審議において内閣と国会とが建設的な対話をしていくことが非常に大事だと思います。現在は、衆議院から回ってきた法案については、もう参議院の審議が始まりますと内閣は修正案を出せないというふうになっておりますけれども、少なくともこういったところを改めていって、参議院の中で内閣と議会が対話をして法案の内容をより良いものにしていくという審議が可能になるようにする、こういったことが非常に重要になってくると思います。
 それから、仮に憲法を改正して参議院の権限を少し縮小するということにする場合には、衆議院が最終的に議決をするまでに参議院でどのように充実した審議をするか、これは参議院だけではございませんで、国会として充実した審議を実現するかという点が非常に重要になると思います。
 例えば、参議院が否決した後、衆議院でもう一度可決するまでに少し時間的な余裕を取って審議時間を確保するとか、衆議院ではもう一度委員会レベルから審査し直すとか、それからこれは両方の委員会で合同会議を開催するとか、いろいろ考えられると思いますけれども、ただ単に参議院が否決したものをもう即日、翌日には衆議院が可決するというようなことでは、これはあってはならないことですので、そういった工夫をしていくことによって言論の力で存在感を発揮するというふうにできるのではないか、こういうのが私の考えでございます。
 ちょうど時間のようでございますので、取りあえずここまでにさせていただきます。
 ありがとうございました。

○小坂憲次憲法審査会会長 どうもありがとうございました。
 次に、只野参考人にお願いをいたします。只野参考人。

○参考人 只野雅人一橋大学大学院法学研究科教授 御紹介いただきました只野でございます。本日はお招きいただきまして、どうもありがとうございます。
 実は、大山先生と私、前提を随分共有しているところが多いかなというふうに思っておりますけれども、私自身は今の憲法の枠の中でできることが随分あるのではないかと、こう考えておりますので、そうした立場からお話をしてまいりたいと思います。時間もございませんので、早速ですが本題の方に移りたいと思います。
 まず、前提として二点ほどお話をしたい点がございます。
 一つは、憲法の統治機構といいましょうか政治機構をどのように見るかと、こういうことでございます。
 国会を始めとしました憲法の政治機構というものは、もちろん憲法のテクストによって縛られているわけでございますけれど、テクストによって記述されていない部分、余白といいましょうか、この部分が相当あるのだろうというふうに思います。そこに選挙制度ですとか政党システムですとか、あるいは国会の議事ルールですとか、そういったものを配置して憲法の機能が決まっていく。したがいまして、その同じテクストの下でも憲法の機能する姿というのは随分異なってまいります。これは、五五年体制の国会と現在の国会を見比べていただければ一目瞭然かと思います。
 ただ、その余白を全く自由に使えるかといいますと、そうではないというふうに私思っておりまして、例えば参議院というような制度を組み込んだとしますと、やはりその制度から生じるある種の論理といいましょうか、実際の政治の在り方を緩やかにではありますけれども枠付けるようなある種の論理が生まれてくるのではないか。その論理を適切に見極めて制度設計をしていく、余白を埋めて憲法を具体化していくということが肝要ではないかと、こんなふうに考えている次第でございます。
 ただ、この論理を見極めるというのはなかなか難しいところがございます。といいますのは、参議院もそうですけれども、第二院というのは大体妥協の産物としてでき上がっておりますので、当初どういう論理が入っているかと、なかなかこれははっきりしない部分がある。例えば、ねじれというような条件が出てきて初めて本来の論理が明らかになると、こういう部分もあるのかなというふうに感じております。
 それから、その前提としてお話ししたいもう一つの点がございまして、これは大山先生のお話とも重なるのですけれども、その二院制というものが一般にどういう構成原理によって組み立てられているかということでございます。
 非常に簡単に申し上げますと、民主的正統性と権限の相関関係、こういうことになるかと思います。つまり、強い民主的正統性を持っている議院により強い権限が付与される、逆に、強い権限を持っていればそれに相応した強い民主的正統性が求められると、こういうことでございます。
 参議院について見ますと、普通直接選挙で選ばれている強い民主的正統性を持っておりますので、ある意味強い権限を持っているというのはそれなりに合理的な結果でありましょうし、逆に、その強い権限を持っているということになりますと、それ相応の民主的な基盤が強く求められると、恐らくこういうことになろうかと思います。
 この権限関係を変えてみまして、例えば不対等型の第二院にするということになりますと、先ほどのお話にもありましたように、第二院が独自性を発揮して、しかし、その場合にはより民主的な第一院がそれを覆すような仕組みを設計すると、こういうことも考えられるかと思いますが、権限が不対等でございますので、どうしても独自性の発揮というのは難しい部分があるのかなと私自身は考えております。
 この民主的正統性の淵源としてどういうものがあるかといいますと、一つは今申し上げたような普通直接選挙ということになりますが、最近ですと、特に最高裁判所の判例にもありますように、投票価値の平等というものが重要な要素として組み込まれているように思います。この辺りは、時間もございませんので、もし御質問があれば後ほど少しお話をしてみたいというふうに思います。
 また、連邦国家などですと、民主的正統性とはやや違った形の正統性がハウスの強い権限を支えるということもあり得るかと思います。州を代表するといったようなことでございますけれど、日本国憲法の場合にはなかなかそういった構造を見出すことは難しいのかなというふうに私自身は考えております。
 このように考えますと、日本の参議院につきまして問題になりますのは、これはできた当初からのことでございますけれども、民主的に選挙された、しかも投票価値の平等を原則にして選ばれているような議院を二つ置くことに一体どういう意味があるのかと、まさにその独自性をどこに求めるのかと、こういうことでございます。
 それぞれ選挙されておりますので、この間のねじれなどが示しますように、両院が対立しますとなかなか調整が付きにくい、あるいは内閣が非常に不安定になると、当然こういう問題も出てくるわけであります。で、どうしたらよいかということになるのですけれども、改めてねじれということの意味についてここでは一言お話をしてみたいと思います。
 通常、ねじれといいますと、両院の党派構成が異なっていると、こういうことをイメージしがちでありますけれども、実は別のレベルでもう一つねじれが生じているのではないかということが指摘されてまいりました。つまり、強い参議院というものを組み込んだ憲法の規範構造と、恐らくこの間ずっと追求されてまいりました二大政党間の政権交代とか政権選択といったものを基調としました議会制の運用ですね、この間にある種のねじれといいましょうかミスマッチが生じているのではないかと、こういうことでございます。
 話は単純でございまして、この間の議会制の運用といいますのは恐らくイギリスをモデルにしていたと思われます。イギリスは、最近少し変わっておりますけど、二大政党の国であると、その間で政権交代が行われていると、こういう話でありますけれど、よく考えてみれば、イギリスには直接選挙された強い第二院というものは存在しておりません。イギリスの第二院は貴族院でございます。それであればうまくいくのですけれども、同じ政党システムを日本のような憲法の下に持ってきました場合、二大政党それぞれが衆参でイニシアチブを握りますと妥協というのは極めて難しくなります。
 ですから、ねじれといいます場合、単に両院の党派構成が食い違っているというだけではなくて、憲法の規範構造が持っているある種の論理と実際の議会制の運用との間にある種のずれが生じてきたと、私はまずこの点を押さえるべきだろうというふうに考えるわけです。
 そうしますと、一つの選択肢は、むしろその憲法の方を変えたらどうかと、こういう話でございますが、もう一つは、やはり憲法に合わせて運用を見直したらどうかと、こういう選択肢も十分あり得るのではないかと、これが私の立場でございます。
 具体的にどうするかということになりますと、例えば二大政党の論理を少し緩和してみる。穏健な多党制というような言い方がよくなされますけれども、両院で多数が確保できるような連立政権中心の仕組みを考えてみると、例えばこういう方向性が出てくるわけであります。
 当然、これは選挙制度の見直しなどともつながってまいります。衆議院の選挙制度をどうするかという問題もございますけれども、他方で参議院の制度をどうするかという問題にもなってくるかと思います。特に、投票価値の平等との関係で、今、都道府県選挙区の見直しということが一つテーマになっておりますので、今私が申し上げたような観点からも、例えば少数代表機能をもう少し強化したような選挙制度を考えてみるといったことも検討されてよいのではないかと、こう考えておる次第でございます。
 最後にもう一点、今のような運用というのはある意味合意型というふうに言うことができるかと思いますが、そうした合意型の下で参議院の独自性なり存在意義をどこに見出していくのかと、こういう問題が出てまいります。これは大山先生お話しになったところと重なるのですけれども、まずはしかしその独自性という言葉の意味をはっきりさせておく必要があるだろうと思うわけであります。
 先ほどのお話にまさにありましたように、独自性といいますと、まずは両院の構成を変えなきゃいけない、構成が違えば投票行動も違ってくると、普通はこう考えるわけでありますけれど、参議院が強いということを前提にしますと、まさにそこからねじれという深刻な問題が生じてまいります。
 参議院の権限を弱くすればうまくいくではないかと、こういう御議論もあるかもしれませんが、その場合、参議院の独自性というものがどこまで発揮されるのか。特に、日本のように社会の多様性がはっきり表れにくいような社会の場合、果たしていかがだろうかと、私はやはり懸念をいたしております。そうしますと、やはりある程度似通った構成、あるいは両院に基盤を置いた内閣の下で国会制度を運用していくと、こういう選択肢を追求していくことになってまいります。
 第二院の独自性といいますと、やはり第一院と違う独自性を強く出さなければいけないと、どうもこういうイメージになりがちでございますけれど、その強い第二院の独自性というのは、むしろ穏健な第二院といった機能の在り方にあるのではないかと、私は最近特にそんなふうに感じております。
 そうした点から見ますと、実は、例えば立法手続などを取り上げてみましても見直すべき点がいろいろあるのではないかと、こういう感じがいたします。例えば、二院制を論じます場合に、よくシャトルシステム、あるいはフランス語ですとナベットというような言葉が使われます。これは両院の間で法案が行き来しながら修正を繰り返していくと、これを指す言葉であります。例えば、今の日本の国会制度なり運用を眺めてみますと、なかなかやはりそういった二院制本来の機能が想定されていないような仕組みになっているのではないかと、こんな感じを持つわけであります。
 あるいは、これも憲法学の中ではずっと指摘されたことでありますけれども、憲法は衆参両院に議院規則の制定権といったものを認めております。言わば自主組織権を認めていると、こういうことでございます。例えば、委員会の構成といったようなことも本来は議院規則の射程に入ってくるのかなと私など思うわけでありますけれど、実際には、戦前からの伝統もありまして、国会法がかなり広い領域を規定していると、例えばそういったことを見直してみるというのも一つの在り方ではないかと、こんな感じがいたします。
 委員会の構成を異ならせるといいますのはなかなか運用上難しいことは承知しておりますけれども、少し違った角度から同じ法案に光を当ててみる、そういったこともあるのではないか。よく多様な民意の反映というふうに言われますけれども、これは決して選挙だけのことではございませんで、審議の中でそういったものを考えてみるということの意義も決して小さくないのではないかと、こんなふうに思っております。
 ちょうど時間も参りましたので、足りない部分は後ほどの質疑の中で補わせていただければというふうに思います。

○小坂憲次憲法審査会会長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見聴取は終了いたしました。
 これより質疑に入ります。
 お手元に配付をいたしております参考人質疑の方式に関する留意事項のとおり、本日の質疑は、あらかじめ質疑者を定めずに行います。質疑を希望される委員は、お手元にある氏名標を立ててお知らせください。そして、会長の指名を受けた後に発言をお願いいたします。
 質疑の時間が限られておりますので、一回の質疑時間は答弁及び追加質問を含め八分以内でお願いいたします。すなわち、参考人の方々の答弁時間を十分に考慮いただき、質疑時間の配分に御留意ください。発言が終わりましたら、氏名標を横にお戻しください。
 参考人の方々におかれましても、答弁はできる限り簡潔にお願いをいたします。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、質疑を希望される方は氏名標をお立てください。

○小坂憲次憲法審査会会長 よろしいですか。
 舛添要一君。

○舛添要一 お二人の先生に同じ質問をしたいと思います。
 まず、衆議院と参議院のねじれ、それほど悪いものなのかと、ねじれってそんなに悪いものなんですかと。私は、ねじれがあることを当然の前提として政治を行った方がいいという立場で、今お二方のお話にもありましたように、なぜねじれが生じるのかと。それは、選挙の時期が違うし、任期が違うわけですから、要するに、時期が違うときにどの政党が人気、国民の支持を得るかというのはまた異なってくるし、争点も違ってくるから、ある意味でねじれというのを前提にした政治をした方がいいんではないかというのが一つです。
 それから、今の憲法を変えないで、憲法の枠内でしかしながらどういう改善策があるかということなんですけれども、只野先生は選挙制度との絡みをかなりおっしゃった。恐らくサルトーリなんかが頭にあるんだろうというふうに思いますけれども。しかし、結局は、選挙制度を決めるのは国会議員であるわけですから、衆議院の勢力が非常に強いときに、その彼らの考え方を完全に無視した形で参議院独自の選挙制度ができるのかなと。要するに、選挙法というのは法律ですから、両院で通らないといけない。
 そういうことを考えると、選挙制度を検討する、考えることによって言わばこのねじれの解決をするというのは現実的には非常に難しいんではないかなと、そういうような気がしておりますので、まず第一点はその点です。
 取りあえず、まずお二方にその点のお答えをいただければと思います。

○小坂憲次憲法審査会会長 それでは、今回は只野参考人からお願いします。

○参考人 只野雅人一橋大学大学院法学研究科教授 二点御質問いただきまして、一点目は、ねじれが悪いことなのかと、むしろねじれを前提に運用を考えるべきではないかというのは、恐らくそのとおりではないかと思います。
 といいますのは、二つ議院が置かれていますので、やはりずれが生じるということは当然あり得るわけですね。ただ、問題は、それをうまく国会全体としての政策決定につなげていくような運用をどうつくっていくかと、多分問題はそこなのだろうと思います。うまくやはり政策決定できないということになりますと、ねじれのマイナス面がどうしても強調して表れてくることになりますので、その適切な運用の仕方をどう仕組んでいくかと、こういう話になりまして、先ほどはそういう流れの中で選挙制度のお話をさせていただいたわけです。
 今の御指摘がありましたように、選挙制度は多数派がつくるものですので、なかなかその多数派の意向に沿わない制度はできないではないかと、これは恐らくおっしゃるとおりかと思います。ただ、そうは申しましても、本来どうあるべきかという議論は大事かなというのが一つございます。
 それからもう一つ、参議院について申しますと、先ほども少し触れましたけれども、投票価値の平等との関係で、昨年、最高裁がかなり強いメッセージを出しております。今の仕組み自体を見直すことが必要かもしれないと、こういうことでございますので、現実的には、やはり参議院の選挙制度の在り方を考えるというのが長期的には一つ選択肢としてなり得るのかなと、こんな感じを持っております。

○小坂憲次憲法審査会会長 大山参考人、お願いいたします。

○参考人 大山礼子駒澤大学法学部教授 私も大体同じようなことでございますけれども、ねじれというのは衆議院と参議院が独自性をそれぞれ持つということですので、あながち悪いことではないと私も思います。
 そのマイナス面をどうやって克服したらよいかということは、一つは、憲法を改正してもうちょっと両院の権限配分を考えるということがございますし、現在の憲法の枠内で考えるのであれば、もうちょっと両院間の協議を活性化する方法を考えるということかと思います。
 そのためには、両院協議会の改革など随分議論されておりますけれども、私は、衆議院、参議院で、先ほどちょっと反論がございましたけれども、やはり内閣法案をどうやって審議していくかということを、もうちょっと実質的な審議を行っていかないと、両院協議会になったからといって急に実質的な審議はできないわけでございますので、その辺の、それぞれの議院の中での審議手続についても考えていくべきだというふうに思っております。
 それから、二点目の選挙制度については、一つ付け加えるとしますと、私は、衆議院、参議院の選挙制度というのを両方をセットで考える組織というのを、両院の合同の組織をおつくりになるというのも一つの方法ではないかと考えております。
 以上です。

○舛添要一 そこで、憲法の枠内でということを先ほど申し上げましたけれども、できれば憲法を改正して、衆参の選挙方法であるとか役割分担論、つまり、一票の格差の問題が出ましたけれども、例えば道州制的なものを導入して、道や州の代表としての、つまりアメリカの上院的な参議院に変えることも十分可能だというふうに思います。
 そうすると役割は随分変わるんですけれども、そこまでいかなくても、例えば今日、参議院本会議では決算の決議がございました。我々は、衆議院が予算が優越ならば決算を参議院では一生懸命やろうということでやってきて、それはそれなりの成果が表れていると思いますので、今、大山先生がおっしゃった、審議時間を確保するとか両院での協議をもっとやるというのは非常に大賛成なんですけれども、そういう役割分担論的な形でいって何か御提言があれば、最後にお二方にお伺いしたいと思います。

○参考人 大山礼子駒澤大学法学部教授 役割分担というのは、なかなかこれも難しいところだと思うんですけれども、おっしゃいましたように、決算審議の充実というのは私も評価できることだと考えております。

○参考人 只野雅人一橋大学大学院法学研究科教授 先ほども申し上げたことですけれども、やはり参議院の場合は長い任期があるということですので、もう少し長期的な視野から何か役割をお考えいただくのがよいのかなと思っておりまして、決算というのは恐らく多年度にわたって見ていくことになりますので、確かに一つの選択し得る領域だろうというふうに思っております。

○舛添要一 終わります。ありがとうございました。

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