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死を忘れた日本人 どこに「死に支え」を求めるか |
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著者:
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中川恵一 |
| 出版社: |
朝日出版社 |
| 発行日: |
2010年5月20日 |
| 定価: |
1,500円(消費税別) |
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がん治療通じ多分野から死を考察
著者は、癌の放射線治療と緩和ケアを専門とする医師であるが、私が厚生労働大臣のときにもよくお会いして、この分野の卓見を聞かせてもらった。これまで2万人以上の癌患者の治療に当たり、多くの死を見つめてきた立場から、生物学、歴史学、哲学、宗教学など、様々な分野の知識を集大成して、死の問題を正面から取り上げている。
人間のみが死を恐れる動物であるが、それは大脳が発達したからであり、それが人間の特権であり、進化の到達点である。今や日本人の2人に1人が癌になり、3人に1人が癌で死ぬ時代となっている。
しかし、日本人は宗教心を失っており、死の恐怖に宗教心で立ち向かうことができなくなっている。さらに、核家族化は進み、自宅ではなく病院で死ぬことが多くなってきたため、「死の予習」ができにくい状況である。
日本人は、「ピンピンコロリ」という死の形を望むが、欧米人は癌による死を好ましく思っている。それは、癌による死は緩慢であり、余命○○年ということになれば、ゆっくりと死の準備ができるからである。癌による死は予見できる死である。
癌は患者に心身ともに苦痛を与える。その苦痛を緩和すべきことを著者は強調する。癌の痛みをとったほうが延命の可能性があり、その意味でも緩和ケアにもっと力を注ぐべきであろう。
癌は早期発見すれば治る病気となりつつあり、その意味でも癌検診率を上げることが喫緊の課題である。そして、治療よりも予防、とくに(1)禁煙、(2)適度の飲酒、(3)野菜中心の食事、(4)運動、この4つを励行することが癌の予防に役立つと言える。
本書の前半分は、人間という生き物、進化、宗教などについての一般的な考察にあてられており、この前提があって、著者の専門である癌治療の話がさらに説得力を持つ。医師は、哲学者や宗教家の要素も必要だということを痛感させられる名著である。著者の医師としての活動に敬意を表しつつ、本書が多くの日本人に読まれることを願っている。
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