幸せな小国オランダの智慧
災害にも負けないイノベーション社会
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著者:
紺野 登
出版社: PHP新書
発行日: 2012年1月30日
定価: 740円(消費税別)
 絆資本に災害克服 日本再生の参考に

 オランダと言えば、まずチューリップ、風車、木靴といったイメージである。また、江戸時代にさかのぼって、鎖国時代の日本の窓口を担った国として、長崎の出島、解体新書、蘭学事始、シーボルトなどが想起される。つまり、東インド会社に象徴される過去の大国としての栄光と今日の小国の姿のギャップが目立ってしまう。
 しかし、国民一人一人の幸せや社会全体のイノベーション力などをみると、オランダは世界に冠たる地位を占めているのである。たとえば、子どもの幸福度は、オランダが世界一であるし、購買力平価ベースの一人当たりGDPは、世界でオランダが10位、日本は25位、知的資本ではオランダが9位、日本が13位、IMDの世界競争力ランキングでは、オランダが14位、日本が26位である。
 本書は、このようなデータを引きながら、オランダのありのままの姿に迫っていく。国土の四分の一が水面下のオランダは、災害大国として困難を克服してきたが、この体験から生まれた智慧が、我々が3・11からの復興を進める上で大いに参考になる。一五世紀以来の堤防建設における社会共同体の協力・提携の制度や文化を「ポルダーモデル」と呼ぶが、ポルダーとは干拓地を単位とするコミュニティーであり、各地域がイニシアチブをとりながら住民に自発的協力を要請したことが由来である。それは、人と人の結びつきを資本として考えるソーシャルキャピタルという考え方である。
 そのポルダーモデルが生み出したイノベーション力については、身近なところでは、たとえばクライフによって完成されたサッカーのトータルフットボール、リートフェルトの建築などがあげられる。さらに、オランダは世界最大の農業ビジネス国であり、水ビジネスも盛んだ。シェル石油の巧みなシナリオプランニング、興隆するゲーム産業なども紹介されている。
 震災からの復興で「絆」が強調されているが、それをポルダーモデルのように発展させることができるのか。日本再生のためにも、苦難の歴史を乗り越えてきたオランダという国に学ぶべきことは多い。